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データセンターの消費電力は10年で15倍に 省エネどう進める?

2024年02月07日データセンター

DXの推進、AIの利用などでデータの流通量が増加する中、同時にデータセンターの消費電力も大きく膨らんでいます。

そして、データ流通量は今後も増加していくことは避けられず、世界では様々な対策が講じられているところです。

ここではデータ社会を持続可能なものにするための各国の動きや技術開発についてご紹介します。

膨らむデータセンターの消費電力 海外では新設抑制も

科学技術振興機構は、現在のサーバーの性能などを前提にした場合のデータセンターの消費電力は、2030年には世界で3000Twh以上にのぼると推定しています(1テラ=1兆)*1。

2018年時点では、データセンターによる消費電力は183Twhとされており、2030年には15倍程度に膨らむという試算です。

データセンターの消費電力の推定
(出所:「AIのエネルギー消費に関する雑感(その1)」国際環境経済研究所)
https://ieei.or.jp/2022/07/expl220701/

特にAIサーバーの消費電力量の増大が見込まれており、こちらは10年ほどで100倍以上との数字になっています。

一方でIEAは世界の発電量は2030年に3万4000Twh前後と試算しています*1。これらの数字によれば、計算上では、2030年になるとデータセンターはそのうちの10分の1を消費するということになります。

アイルランドでは新規建設に抑制策

こうした中、グーグル、アマゾン・ドット・コムなどの大手クラウド事業者のデータセンターが集積しているアイルランドでは、データセンターの拡大で電力需要の増加に対応できなくなるリスクが浮上しています*2。

そこでアイルランドでは2021年11月にCommission for Regulation of Utilities' (CRU) Directive on Data Centre Grid Connectionが発行されました。電力需給が厳しい地域では新規データセンターにオンサイト発電・蓄電機能や電力の需給を一致させる「デマンドレスポンス」を求めています*3。

データセンターはエネルギー規制当局の監視下に置かれ、データセンターの申請者には厳しい評価基準が設けられました。

アイルランドでのデータセンター評価基準概要
(出所:「令和3年度データセンターにおける再エネ活用促進に係る調査検討委託業務 成果報告書」野村総研
https://www.env.go.jp/content/000077974.pdf p44

データセンターの新規建設を全面的に禁止するわけではありませんが、ひとつの抑制策といえます。

各国で始まった省エネの模索

他にも、政府としてデータセンターの省エネ化、グリーン化を後押しする制度を取っている国はいくつもあります。

減税などによる省エネ支援

アメリカでは州政府で独自のインセンティブを設けているところがあります。

イリノイ州ではカーボンニュートラルである、もしくはグリーンビル認証を受けているデータセンターの所有者やオペレーターに州税、地方税の免除などの制度があるほか、アリゾナ州では再生可能エネルギー発電を行うデータセンターに対して追加のクレジットを設けています*4。

またフランスでは、デジタル分野での温室効果ガス排出量が増加し2040年には全体の6.7%に達する見込みです。そしてデジタル分野の中でのデータセンターの割合が14%にのぼっています。

フランスのデジタル部門でのGHG排出量内訳
(出所:「令和3年度データセンターにおける再エネ活用促進に係る調査検討委託業務 成果報告書」野村総研)
https://www.env.go.jp/content/000077974.pdf p42

この背景を受けてデータセンターにおいては廃熱の利用と、冷却水利用量に関する制限に順守した場合に税制優遇措置が設けられました。

グリーン電力の導入や排熱の再利用は有効と考えられているようです。

なお、ノルウェーではデータセンター事業者に対し、余剰熱の利用可能性を調査するよう義務付けています*5。

経済産業省のベンチマーク制度

国内でも、資源エネルギー庁がデータセンター事業も含む複数の事業に対してベンチマーク指標を定めます。

2030年に照準を合わせており、データセンター業の場合は、事業所内で使う電力利用料を事業者に応じて一定の量に抑えた事業者は省エネ優良事業者として社名を公表するというものです*6。

低電力化に向けた技術開発も続々

また、データセンターの省エネ性能を高める技術も次々と開発されています。

KDDIなどはサーバーを比較的温度が低い潤滑油に浸して冷却する「液浸」と呼ばれるシステムを開発しています。
空調での冷却に比べ、冷却に必要な電力を94%削減できるということです*7。

また、京セラはサーバーの内部で電気信号を光信号に変換してデータを伝送する装置を開発、少ない電力で大容量のデータを光信号に変換して高速処理し、データ転送に必要な電力を4割ほど削減できるといいます*8。

今後、世界でのデータ通信量が増え、それに伴って現在の技術のままでは消費電力の増加が避けられないことは確実です。

もはや、デジタルなしでは企業は存続できません。
持続可能なビジネスの前提として、企業や業界をまたいだ協力体制や様々な工夫が求められるのは必至です。


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*1、2
「データセンター、消費電力急膨張 2020→30年で15倍」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79472440T20C22A1EA1000/

*3、4、5
「令和3年度データセンターにおける再エネ活用促進に係る調査検討委託業務 成果報告書」野村総研
https://www.env.go.jp/content/000077974.pdf p43、46、45

*6
「データセンターのベンチマーク制度の概要」資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/support-tools/data/2022_01benchmark.pdf p2

*7、8
「データセンター 企業間で省エネ性能高める技術開発が加速」NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230412/k10014035601000.html

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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