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導入事例

愛知時計電機株式会社

導入企業
愛知時計電機株式会社
https://www.aichitokei.co.jp/
業種
製造業
導入サービス

ポイント

  • 開発から運用まで一気通貫で対応
  • 国内・自社データセンターで稼働する国産クラウドを採用
  • 強固なパートナーシップ関係で迅速かつ柔軟な対応を実現

国内データセンターのクラウド基盤上でスマートメーターデータを安全に収集・配信

 ガス・水道メーター市場において国内トップクラスのシェアを誇る愛知時計電機は、2019年よりクラウド経由でメーターから検針データを取得できる新サービス「アイチクラウド(LPガス版)」の提供を開始。そのクラウドインフラおよびシステムの開発・運用を担うベンダーとしてアイネットを採用したことで、国内データセンターを使った安心・安全なサービス提供を実現した。


ガス・水道メーターの検針をリモートで実施できる「アイチクラウド」

 愛知県名古屋市に本社を構える愛知時計電機株式会社(以下、愛知時計電機)は、ガスメーター製品や水道メーター製品の市場において国内トップクラスのシェアを誇る大手メーカー企業。1898年に時計メーカーとして創業した同社は、後に持ち前の高い精密加工技術を武器に水道メーターをはじめに、ガスメーターの分野に進出。瞬く間に国内を代表するメーカーへと成長し、現在ではそのほかにも工場や各種インフラ設備向けの計測機器や、上下水道および農業・工業用水施設の監視・制御システムの提供なども手掛けている。
 そんな同社が現在力を入れている事業の1つに、データ配信サービス「アイチクラウド」がある。これはLPガスメーターや水道メーターの検針データを、携帯電話の無線通信網を介してクラウド上に集め、その情報をインターネット経由で容易に参照したり、データを自由に利用できるようにしたもの。ガス・水道事業者は、このサービスを利用することでそれまで人力に頼っていたメーター検針作業を無人化できるとともに、検針データを活用して自社業務の効率化を図ったり、新たなサービスを自社ユーザーに提供できるようになる。
 アイチクラウド(LPガス版)のサービス提供に至った背景について、愛知時計電機 営業本部 IoT推進部 部長 齊藤満氏は次のように説明する。
 「少子高齢化が進む中、LPガス事業者様の多くは人手不足に悩まされています。そんな中、ネットワークを介した自動遠隔検針は作業の省力化に役立つだけでなく、悪天候下での検針や人が立ち入りにくい場所での検針も容易に行えるようになります。また検針だけでなく、メーターが異常を検知した際に担当者にメールでアラートを通知したり、遠隔地から弁を開閉することも可能になります」
 また、アイチクラウドは検針データを外部システムと連携できるインタフェース(API)を備えており、これを活用することで、例えば販売管理システムとのデータ連携による料金請求業務の自動化といった業務効率化が図れたり、Web検針票など、その先の一般消費者の利便性を向上させることができる付加価値サービスへのデータ利活用が可能となるなど、様々なメリットを享受することができる。

愛知時計電機株式会社
営業本部 IoT推進部部長
齊藤 満 氏

携帯電話網+LPWA経由で検針データをクラウド上に集約

 こうした遠隔検針サービスの構想自体はかなり以前から存在しており、実際に一部では実用化もされていた。しかしアイチクラウドのように手軽に利用可能なサービスが出現するまでには、技術面において幾つかのブレークスルーを待たなくてはならなかった。
 「メーターから検針データを無線で飛ばすためには電力が必要ですが、かつてメーターから検針データを無線(携帯電話)で飛ばすには、大変多くの電力が必要であったため、アナログ電話回線の電力供給機能を使った遠隔検針サービスが実用化されており、弊社もこれを開発・提供していました。しかしアナログ電話回線は利用上の制約が多いことに加え、回線のデジタル化に伴いアナログ回線自体が少なくなってしまったため、結局遠隔検針サービスもあまり普及しませんでした」
 こう語るのは、愛知時計電機 営業本部 IoT推進部 副部長 井川重行氏。こうした技術面の制約を克服するブレークスルーとなったのが、極めて少ない消費電力で無線ネットワークを実現できる「LPWA(Low Power Wide Area)」の登場だった。この新技術の登場で、無線装置内部に搭載した電池だけで長期間の稼働を続けられる目途が立ち、再び遠隔検針サービスが脚光を浴びることとなった。
 こうして各メーターメーカーや通信キャリア企業などの間で、LPWAを使った遠隔検針サービスの開発が一気に加速することになった。無論、愛知時計電機もLPWA技術が登場して間もない頃から技術検証を開始し、かなり早い段階からLPガスメーター向けのアイチクラウドの構想を検討していた。
 しかしLPWAが当時まだ登場して間もない技術であったことに加え、愛知時計電機ではそれまでクラウドベースのシステムを開発した経験がなかったため、細かなシステム要件を検討する作業はかなり難航したという。
 「当時既にクラウドは世に広く普及していましたから、検針データを収集・管理するシステムはクラウド上に構築することにしました。しかし弊社にはクラウドの知見がほとんどなかったため、『こんなサービスをクラウドで実現したいのですが』とさまざまなベンダーに相談し、提案を募る中で細かな要件を詰めていくしかありませんでした」(井川氏)

愛知時計電機株式会社
営業本部 IoT推進部副部長
井川 重行 氏

「初物尽くし」のプロジェクトをアイネットと二人三脚で遂行

 こうして複数のベンダーから提案を募り、それらの内容を比較検討した結果、最終的に同社が選んだのがアイネットの提案だった。アイネットはもともとLPガス販売管理システム「プロパネット」の開発・提供元ベンダーとして愛知時計電機とはパートナー関係にあり、アイチクラウドについても愛知時計電機から提案の依頼を受け、アイネットが自社データセンターで運営するマネージドクラウドサービス「Next Generation EASY Cloud®(NGEC)」を使ったシステム構築の提案を行った。
 この提案を最終的に選んだ理由について、井川氏は次のように述べる。
 「アイネットさんはクラウドに関して豊富な実績と知見をお持ちで、かつ今回の弊社の提案依頼に対しても極めて詳細に渡る提案をいただいたため、最終的に選定に至りました。他社さんからはAWS(Amazon Web Service)をはじめとする海外のメガクラウドサービスを使った提案もいただきましたが、検針値などメーターのデータを海外のサーバに預けることに対してお客様に不安を感じさせてはいけないと感じ、国内で自社データセンターを運営しているアイネットさんを選びました」
 早速アイチクラウドの開発プロジェクトを正式に立ち上げ、アイネットの技術者とともにクラウドインフラおよびその上で稼働するシステムの設計作業を始めた。このプロジェクトで採用する技術のほとんどが、これまで採用したことのない「初物」だったため、当初は戸惑うことも多かったという。
 「LPWA自体が当時は新しい技術で、通信キャリアさんにもまだ技術的な知見が蓄積されていませんでした。しかもそれをスマートメーターのようなIoTプラットフォームと接続するとなると、国内ではほぼ初めての事例となるため試行錯誤の連続でした。加えて弊社にはクラウドの知見がまったくなかったので、本当に初物尽くしでした」(井川氏)
 特にクラウド上のシステム開発に関しては、オンプレミスとは異なるさまざまなノウハウが必要とされ、場合によっては機能上の制約も発生するため、システム仕様を確定するまでにはかなりの苦労があったという。しかしクラウドの知見が豊富なアイネットのエンジニアと二人三脚でシステム仕様を検討する過程で、少しずつクラウドの知見を吸収しながら徐々にシステム仕様を詰めていった。
 その結果2019年9月、無事アイチクラウド(LPガス版)の初回リリースにこぎ着けることができた。


初回リリース後も機能強化を進める

 初回リリース版のアイチクラウドは多少機能が限定されていたものの、その後アイネットとともに機能強化を進めていった結果、2023年3月時点で90万台超のLPガスメーターがアイチクラウドに接続され、順調に接続メーター数を延ばしている。
 以降、接続メーター数が増えるに従い、アイチクラウドの安定稼働に対する期待も高くなっている。アイチクラウドの運用を担当する愛知時計電機 IoT推進部 主任 森本晃平氏によれば、クラウドインフラ(NGEC)の安定性やアプリケーション側も含めた対応が求められるなか、スピーディーかつ柔軟に対応頂けていることは、大いに助けられているという。
 「例えばお客さまのご要望によりクラウドインフラやアプリケーション側で何らかの対応が必要になっても、アイネットのエンジニアさんにはいつも素早く丁寧に対応していただいており、とても助かっています」
 またサービスの開発を担当する同社 IoT推進部 主任 森岡賢哉氏も、「ラストワンマイルへの接続のご要望が高まったことをうけ、複数の携帯電話網を利用できるように開発いただいただけでなく、これまでさまざまな機能をアイネットさんに追加開発していただきました。今後も数多くのアップデートを予定しており、確立されたフローにもとづく、クオリティの高い開発と技術力はいつも頼りにしています」とアイネットの対応力を高く評価する。
 なおアイチクラウドは愛知時計電機にとって初となる本格的なクラウドサービスであり、それまでおもに「モノ売り」に軸足を置いてきた同社が「コト売り」へとビジネスモデルを進化させる先駆けとして、同社内でも大きな期待を集めているという。こうした期待に応えるためにも、「今後ともアイネットさんとの協業には大きな可能性を感じている」と齊藤氏は述べる。
 「LPガスメーター市場全体において弊社が占めるシェアと比べると、データ配信サービス市場におけるシェアはまだ低い水準に留まっており、今後シェアを伸ばしていくためにはQCDの観点でサービスの価値をさらに高めていく必要があると考えています。そのためにはやはりアイネットさんの協力が不可欠ですから、今後もさらに協業関係を強化していきながら、ともにアイチクラウドの発展に尽力いただければ幸いです」

愛知時計電機株式会社
営業本部 IoT推進部主任
森本 晃平 氏


愛知時計電機株式会社
営業本部 IoT推進部主任
森岡 賢哉 氏

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