株式会社アストロスケールは、東京都墨田区に本社を構える民間の宇宙スタートアップ企業。スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去をはじめ、宇宙の環境改善や「持続可能な開発」を可能にするための基盤インフラとして軌道上サービスの提供を目指している。
現在、地球の衛星軌道上には9000以上の人工衛星が存在するが、そのうち稼働しているのは6800基ほどで、残りは廃棄されたまま軌道上を周回している。衛星の打ち上げで利用されたロケットから切り離された部品なども加えると、現在何万もの大型の物体が軌道上に打ち棄てられている。さらにサイズ1mm以上のものも含めると、実に1億3000万ものデブリが存在すると推定されている。
これらがもし人工衛星や宇宙ステーションに衝突すると、大事故につながる危険性がある。さらに今後各国による宇宙開発が進むに従い、人工衛星の数も急激に増えていくことが予想されるため、このままではデブリにまつわるリスクも高まっていく一方だと考えられている。そのため、デブリを除去して衛星軌道上の安全を確保するための対策が急務だと言われており、各国政府や国際機関が対策方法を模索している。
そんな中、アストロスケールは民間の宇宙スタートアップ企業として独自のデブリ除去技術を開発し、現在宇宙航空研究開発機構(JAXA)や世界各国の政府、国際機関などと協力しながら技術検証を行っている。アストロスケール 代表取締役副社長 伊藤美樹氏によれば、同社は既に宇宙空間での技術実証を進めており、実用化に向けて順調に歩を進めているという。
「2021年3月に打ち上げた宇宙デブリ除去技術実証衛星『ELSA-d』を使って、デブリを模した『疑似デブリ』の捕獲等の技術実証に成功しています。またJAXAの商業デブリ除去実証プロジェクト(CRD2プロジェクト)の一環として、弊社が開発した商業デブリ除去実証衛星『ADRAS-J』が近く打ち上げられる予定にもなっています」
なお同社はアストロスケールグループの日本拠点として、主に人工衛星の開発および製造の業務を担っているが、グループ内にはこのほかにも海外に複数の拠点があり、米国や英国、欧州などがそれぞれ進めるデブリ対策プロジェクトに参画しているほか、デブリ対策のための法整備や国際的なルール作りにも積極的に関与している。