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導入事例

株式会社アストロスケール

導入企業
株式会社アストロスケール
https://astroscale.com/ja/
業種
宇宙開発事業
導入サービス

「持続可能な宇宙環境」の実現を強力にバックアップするアイネットの宇宙開発スキル

 宇宙空間上に打ち棄てられたスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去を含む軌道上サービスを通じて、宇宙の環境改善を目指す宇宙スタートアップ企業のアストロスケール。同社はデブリ除去技術の実証用人工衛星の設計や製造、運用を行うにあたり、人工衛星の設計・製造・運用において豊富な実績を持つアイネットの協力を仰ぎ、短期間での衛星の開発や、打ち上げ後のスムーズな運用を実現した。

ポイント

  • 衛星の設計・製造特有のノウハウを長年の経験と幅広いスキルのある人材により運用を支援
  • パラボラアンテナをアイネット敷地内に設置・運用を実施
  • 短期間での衛星開発や打上げ業務に対し、さまざまなエキスパートの支援を仰げる体制

独自のデブリ除去技術で「持続可能な宇宙環境」の実現を目指す

 株式会社アストロスケールは、東京都墨田区に本社を構える民間の宇宙スタートアップ企業。スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去をはじめ、宇宙の環境改善や「持続可能な開発」を可能にするための基盤インフラとして軌道上サービスの提供を目指している。
 現在、地球の衛星軌道上には9000以上の人工衛星が存在するが、そのうち稼働しているのは6800基ほどで、残りは廃棄されたまま軌道上を周回している。衛星の打ち上げで利用されたロケットから切り離された部品なども加えると、現在何万もの大型の物体が軌道上に打ち棄てられている。さらにサイズ1mm以上のものも含めると、実に1億3000万ものデブリが存在すると推定されている。
 これらがもし人工衛星や宇宙ステーションに衝突すると、大事故につながる危険性がある。さらに今後各国による宇宙開発が進むに従い、人工衛星の数も急激に増えていくことが予想されるため、このままではデブリにまつわるリスクも高まっていく一方だと考えられている。そのため、デブリを除去して衛星軌道上の安全を確保するための対策が急務だと言われており、各国政府や国際機関が対策方法を模索している。
 そんな中、アストロスケールは民間の宇宙スタートアップ企業として独自のデブリ除去技術を開発し、現在宇宙航空研究開発機構(JAXA)や世界各国の政府、国際機関などと協力しながら技術検証を行っている。アストロスケール 代表取締役副社長 伊藤美樹氏によれば、同社は既に宇宙空間での技術実証を進めており、実用化に向けて順調に歩を進めているという。
 「2021年3月に打ち上げた宇宙デブリ除去技術実証衛星『ELSA-d』を使って、デブリを模した『疑似デブリ』の捕獲等の技術実証に成功しています。またJAXAの商業デブリ除去実証プロジェクト(CRD2プロジェクト)の一環として、弊社が開発した商業デブリ除去実証衛星『ADRAS-J』が近く打ち上げられる予定にもなっています」
 なお同社はアストロスケールグループの日本拠点として、主に人工衛星の開発および製造の業務を担っているが、グループ内にはこのほかにも海外に複数の拠点があり、米国や英国、欧州などがそれぞれ進めるデブリ対策プロジェクトに参画しているほか、デブリ対策のための法整備や国際的なルール作りにも積極的に関与している。

株式会社アストロスケール
代表取締役副社長
伊藤 美樹 氏

衛星開発の専門人材を確保するためアイネットに協力を仰ぐ

 そんな同社も、2013年の設立当初はわずか6人のメンバーで人工衛星の開発をスタートした。どのメンバーも衛星開発に関して豊富な経験を持ち、それぞれの分野のエキスパートばかりだったが、実際にものを作るとなると6人の知見と経験を集結してもなお足りない知見やノウハウが数多くあったという。
 「衛星の設計が詳細になるにつれて、より細部な部分のプロフェッショナルの知見がどうしても必要になってきます。また実際にものを作る際にも、製造には製造特有のノウハウが求められるため、製造分野の知見と経験を持つ人材が欠かせません。しかし弊社は人材を豊富に有する大手メーカーとは違って、立ち上がったばかりのスタートアップ企業でしたから、エンジニアはいたものの全ての専門分野まではカバーできておらず、足りない専門人材を外部から獲得する必要がありました」(伊藤氏)
 例えば部品を組み立てるためにネジを締める作業1つとっても、ただ締めれば良いというわけではなく、過去の技術の蓄積によるノウハウがある。 半田付けの作業や、接着剤を使った接着作業についても、衛星打ち上げ時のロケットの振動や、打ち上げ後の宇宙空間における真空・低温状態に耐えるためには、長年培った技術や知見があってこそ確実なモノづくりが実現できる。昔から国の衛星事業を手掛けてきた大手メーカーでは社内にそうした人材を常時確保しているが、スタートアップ企業ではなかなかそうはいかない。
 そんなとき、同社の心強い味方になってくれたのがアイネットだった。アイネットは宇宙開発における人工衛星のシステム設計や検査・試験、運用・評価などの支援サービスを50年近く提供しており、古くは1977年に打ち上げられた気象衛星「ひまわり」から最新の大型衛星に至るまで、数多くの人工衛星の開発に従事してきた実績を持つ。
 「アストロスケールの社員の中に、前職でアイネットと一緒に衛星開発に携わっていた者がいたので、早速紹介してもらいました。アイネットは大手メーカーが手掛ける衛星開発プロジェクトにおいて長い経験と実績をお持ちで、かつ幅広いスキルと経験を有する人材を有しておられたので、ぜひ弊社の業務もお手伝いいただければと考えました」(伊藤氏)


人工衛星の開発・運用事業において豊富な実績を持つアイネット

 現在アイネットの技術者が、アストロスケールの衛星の開発や製造、打ち上げ後の運用などさまざまな場面で支援サービスを提供している。アイネット DX本部 宇宙・衛星ソリューション事業部 第2システム部 課長代理 白川俊二氏も、そうした技術者の1人。もともと大手メーカーで衛星開発・製造プロジェクトに携わっていた同氏は、現在アストロスケールが製造する衛星の組み立てや動作試験の作業を担当している。
 「人工衛星は電気機器や通信機器、データ処理機器などさまざまな搭載機器や、構体パネルをはじめとする多種多様な構造物を組み合わせることで成り立っています。私たちはこれらコンポーネントの動作やコンポーネント間のインタフェースのテストを行ったり、衛星の完成形へと組み上げていく作業などを担当しています。さらには、組み立てられた後の衛星が宇宙環境に適合しているかどうかのテストも実施しています」
 各コンポーネントの単体テストなどの作業はアストロスケールの施設で行う一方、宇宙環境テストを行うためには専用の大型施設が必要になるため、JAXA筑波宇宙センター内にある施設を借りて行うことが多い。その間アイネットの技術者たちも、つきっきりで作業にあたる。
 白川氏とともにこれらの作業を担当するアイネット DX本部 宇宙・衛星ソリューション事業部 第2システム部 主任 米倉奨氏によれば、アイネットには人工衛星の製造やテストに関する豊富な知見や、作業を行うために必要な技能・資格を持つ人材が多数存在するという。
 「半田付けや接着といった個々の作業に関して、専門的な知識を有するメンバーが多数いるほか、通信やクレーン操作など衛星の開発・製造作業に必要な作業の国家資格を持つ者もいます。また衛星の製造だけでなく、設計や運用に関しても豊富なノウハウを有しています」
 アイネットはもともと、打ち上げに成功して運用を開始した後の人工衛星をコントロールするための「地上設備の開発・運用」でも豊富な実績を持っており、アストロスケールが2021年に打ち上げたELSA-dについても、衛星と地上との間で通信を行うためのパラボラアンテナをアイネット敷地内に設置して運用をサポートしている。

株式会社アイネット
DX本部 宇宙・衛星ソリューション事業部
第2システム部 課長代理
白川 俊二 氏


株式会社アイネット
DX本部 宇宙・衛星ソリューション事業部
第2システム部 主任
米倉 奨 氏

衛星の設計・製造・運用に関する幅広いノウハウと専門性

 このように人工衛星の開発・製造・運用の広範なフェイズに渡って豊富なノウハウと人材を有する点は、アストロスケールにとっても非常に心強かったと伊藤氏は振り返る。
 「弊社の衛星の開発期間は比較的短いのですが、必ずロケット打ち上げに間に合わせる必要があるため、開発スケジュールを遅らせるわけにはいきません。しかし社内に十分な数の要員がいるわけではなく、外部から必要な時に素早く要員を確保できないとスケジュール遅延の原因になりかねません。その点アイネットにはさまざまな分野の専門性を持つエキスパートがいらっしゃいますから、そうした方々の支援を適宜仰ぐことでスケジュールを遅延させることなく開発を進めることができました」
 ときには、アイネット側が行う作業に必要な機器や環境が不足していたこともあったという。そんな場合でも、アイネットの技術者は工夫を凝らしながら何とか作業を進め、状況に合わせた柔軟な対応を心掛けていたと白川氏は話す。
 「アストロスケール様と早期に信頼関係を築くことができましたので、作業に必要な環境も迅速に準備していただけました。アストロスケール様内での意思決定がこれまでの経験にはないくらい早い為、必要なものをすぐに用意して頂けてとても助かりました。」
 なおアストロスケールが現在手掛けているデブリ除去事業は、今後急速な成長を遂げると予想されており、さらには衛星の寿命延長や稼働中の衛星の点検といったデブリ除去以外の軌道上サービスも幅広く提供していく予定だという。
 「弊社では、2030年までにこれらのサービスが当たり前のものになることを目指しています。この目標を達成するためには、今後もアイネットの強力なご支援が欠かせないと考えています。アイネットは大手メーカーの衛星開発を通じて培った豊富な知見をお持ちですから、今後それらを弊社以外の宇宙スタートアップ企業にも提供することで、日本の宇宙開発全体の底上げにも貢献していただければと期待しています」(伊藤氏)

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担当部門/DX本部

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