2022年の大河ドラマの舞台として注目を集める鎌倉。その歴史ある街の文化・芸術の振興を担うのが公益財団法人 鎌倉市芸術文化振興財団(以下、鎌倉市芸術文化振興財団)である。
約30年前、大小のホールを始めとして、さまざまな芸術・文化を創造するスペースとして開館した鎌倉芸術館。その管理・運営を目的として鎌倉市芸術文化振興財団は設立され、その後市内の貴重な文化遺産である「鎌倉文学館」「鎌倉市鏑木清方記念美術館」の指定管理者として、その責務を果たしてきた。
しばらく別法人が行っていた鎌倉芸術館の指定管理業務を、2022年4月よりふたたび受託したことを機に財団内の情報インフラの見直しを行うこととなった。
その背景を、鎌倉芸術館 館長 永井健一氏は次のように説明する。
「前職でも自治体の文化芸術財団に所属していたのですが、そこであるときにサーバーが故障し、データが消失してしまったことがありました。あいにくバックアップも取られていなかったため、さまざまな記録に空白ができてしまいました。その後、その財団では再発防止のため、自社サーバーを廃してクラウドシステムを導入し、今も運用を行っています。それを目の当たりにしていたことから、鎌倉芸術館の館長に就任するに当たり、クラウドによるデータの保管・保全システムを導入することを念頭に置いていました」(永井氏)
また、財団本部 総務課課長 兼 鎌倉芸術館 総務担当課長 浅岡麻美子氏によれば財団の業務上でも課題が顕在化していたという。
「鎌倉文学館、鏑木清方記念美術館、そして鎌倉芸術館は同じ鎌倉市内とはいえ、市内に散在しています。それぞれの館は文学、美術、芸能とジャンルが異なっていることもあり、独立した管理・運営を行っていますが、本部総務としては各館とさまざまな情報や資料などのデータのやり取りがあります。これまではメールや電話を中心としてやり取りを行っていましたが、役員会の資料や、経理情報などもメールに添付して送っていたため、常に不安を抱えていました。また、写真や動画などの容量の大きなデータはUSBメモリを使うなどしてやり取りしていましたが、メディアの破損によるデータの損失など、こちらもリスクと紙一重の状態で業務を続けておりました」(浅岡氏)
このような背景の中、2022年4月の鎌倉芸術館管理業務開始にあたり、新たな課題が判明する。
「2022年1月中旬に準備室を設置し、業務引き継ぎを行う中で、館内のネットワークやシステムは、元々の館の設備ではなく、既存の指定管理者が設置したことが判明し、4月1日の管理者交代の際に入れ替えが必要なことがわかりました」(永井氏)