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導入事例

株式会社MIZUTORI

導入企業
株式会社MIZUTORI
https://company.mizutori-sc.com/
業種
教育・学習支援業
導入サービス

ポイント

  • 金メダリストとICTのプロが手を組んで実現した「運動学習支援アプリ」
  • 簡単かつ直感的に利用できるアプリを実現
  • アプリ開発における知見やノウハウの課題を経験と実績のある人材で解決

金メダリストとICTのプロが手を組んで実現した「運動学習支援アプリ」

 体操競技の金メダリストである水鳥寿思氏が設立した株式会社MIZUTORIでは、未来の金メダリストを育成するための体操競技指導や一般向けの体操教室などを運営する一方、ISTソフトウェア(株式会社アイネットグループ) と共同で開発した運動学習支援 アプリ「スポテク」を使った器械運動指導にも力を入れている。既に学校の体育授業の現場で効果を発揮しているほか、今後は民間のスポーツクラブなどへの普及も期待されている。


金メダリストが考案した運動学習支援アプリ「スポテク」

 株式会社MIZUTORIは、体操競技選手として2004年のアテネオリンピック男子団体で金メダルを獲得し、現役引退後は男子体操チームの強化本部長や監督などを歴任する水鳥寿思氏が2017年に設立した企業。神奈川県川崎市に本格的な体操器具を備えた練習施設を構え、将来オリンピック選手を目指す子供たちに体操競技の指導を行うほか、チアリーディングや新体操の教室も開いている。また東京都内にも幾つかスタジオを設け、大人を対象にした体操教室やフィットネス指導なども行っている。
 そんなMIZUTORIが現在最も力を入れている施策の1つに、「スポテク」というスマートフォンアプリを使ったこれまでにない新たな形の体操指導がある。スポテクはICTを使ってスポーツの運動学習をサポートすることを目的に開発されたアプリで、文部科学省が定める「学習指導要領」に含まれる器械運動の技を子どもたちがより効率的に、かつ楽しく習得できるようさまざまな機能が盛り込まれている。
 スポテクを利用するには、まずその日の練習の目標とコンディションを入力し、技のお手本動画を参照しながら自分で実際にやってみた様子を動画に録画する。次にその動画を先生や指導者に見てもらい、評価やコメントをもらう。さらにその内容を基に、完成度の向上やより難易度の高い技に挑むために、自分が技に挑んだ際の「動いた感じ」の振り返りを行う。
 こうした一連のPDCAサイクルをアプリ内で繰り返し実行することで、子どもたちの器械運動の上達を促すとともに、「仮説検証による課題解決のプロセス」を自然と学ぶことで体操やスポーツ以外の分野での問題解決能力を養うことができるという。
 スポテクの開発を思い立った背景について、水鳥氏は次のように語る。
 「選手として、また監督として日本代表チームで活動してきた中で蓄積してきた知見をどうやって一般の方々に還元できるか、長らく模索してきました。一方、学校教育の現場にはGIGAスクール構想でタブレット端末が導入され、民間のスポーツクラブでもコロナ禍を機にデジタル化の気運が高まってきました。そこでICTを使った仕組みを活用することで、自身の知見をより多くの人々に届けることができるのではないかと考えました」

株式会社MIZUTORI
代表取締役
水鳥 寿思 氏

スポーツ科学の知見や「学習指導要領」の学習体系を取り込む

 スポテクの開発には、もう一人のキーマンが存在する。大阪大谷大学でスポーツ科学の一分野である「発生運動学」の研究を行う三木伸吾准教授だ。三木氏と水鳥氏の出会いは、水鳥氏が大阪大谷大学に一時期在籍していた10年前にまでさかのぼるという。
 「2013年から2014年にかけて水鳥先生と同じ職場にいたのですが、その後も継続してスポテクの構想について話し合っていました。その間、体操の日本代表チームの強化プログラムに参画したのですが、代表選手たちが練習中に自身の試技の様子をタブレットで動画に撮影して見返したり、過去に撮影した動画を即座に呼び出して参照したりする様子を目の当たりにして、『これと同じことをアプリで実現できたらいいのでは?』という発想を得ました」(三木氏)
 トップアスリートになると、こうした過去の振り返りや、自身の強み・弱みの分析などを感覚的にこなせるようになるが、こうした取り組みを誰でもできるように例えば過去の動画をカレンダーと紐づけたり、技の種類ごとに動画や練習日誌の内容をすぐ呼び出せるようにしたりすれば、トップアスリートはもちろんのこと、学校体育の教育現場でも大いに役立つのではないかと三木氏は考えたという。
 「もともと私は学校の体育教員の養成を長らく手掛けてきたこともあり、まずは文部科学省の学習指導要領の内容に準拠することで、学校の現場で広く安心して使っていただけるアプリになるのではないかと考えていました」(三木氏)
 ただし水鳥氏と三木氏はともにICTの専門家ではないため、自らアプリを開発するとなるとかなり高いハードルを越える必要があり、なかなかアイデアを具現化するための第一歩を踏み出せずにいた。そんな折、水鳥氏がたまたま共通の知人を通じて知り合ったのが、ISTソフトウェアの代表取締役社長を務める染谷光四郎氏だった。水鳥氏からスポテクの構想を聞いた染谷氏は、そのビジョンやコンセプトに大いに共感し、早速協力を申し出たという。
 「染谷社長に構想をお話ししたところ、こうした仕組みを通じて子供たちの課題解決の力を養うことは、スポーツに限らず幅広い分野で役立つと高く評価していただき、アプリ開発にご協力いただけることになりました」(水鳥氏)

大阪大谷大学
准教授
三木 伸吾 氏

ISTソフトウェアとの出会いを機にアプリの開発に着手

 早速、2019年からスポテクの開発プロジェクトがスタートした。まずは三木氏が、学習指導要領の内容と自身の知見を基に、アプリで網羅すべき器械運動の技の内容やそれぞれの技の間の系統性、さらにはそれぞれの技を行う上でのワンポイントアドバイスなど、アプリに盛り込むべきコンテンツの内容をドキュメントの形にまとめ上げた。
 その内容を基に、ISTソフトウェアのエンジニアがアプリのプロトタイプを作成し、それを水鳥氏と三木氏がレビューするとともに、各分野の専門家のアドバイスも仰ぎながら機能やインタフェースをブラッシュアップしていった。ISTソフトウェア側の開発メンバーを務めたITサービス企画本部ITサービス企画部 部長 谷中大樹氏によれば、初期の設計・開発作業は比較的スムーズに運んだという。
 「コンテンツの内容をあらかじめ三木先生にしっかり整理していただいていたおかげで、基本的にはその内容をそのままアプリのデータベースとインタフェースに落とし込むだけで済みました。そのため、プロトタイプの開発は思ったよりはるかにスムーズに進みました」
 ただし、「プロトタイプを作り上げた後が大変だった」と水鳥氏は振り返る。
 「実際に現場の方に触ってもらったり、自分たちで使ってみた結果、『こんな機能も必要なのではないか?』『こうした方が使いやすくなるのではないか?』と次々と課題が持ち上がりました。UIデザインについても私たち自身に知見がなかったため、子どもたちにもっと簡単かつ直感的に使ってもらうためには、さらにデザインに工夫を凝らす必要もありました」
 たとえ機能自体は充実していたとしても、習熟に時間がかかるようでは多忙を極める学校教育の現場ではなかなか手に取ってもらえない。さらに言えば、学校に導入するための予算をどう確保してもらうかという問題もある。こうして実際にアプリを現場に展開するに当たってはさまざまな課題に突き当たったが、水鳥氏とMIZUTORIのスタッフ、三木氏、そしてISTソフトウェアの開発メンバーが毎週定例ミーティングを重ねる中で解決策を議論し、1つ1つクリアしていくことでスポテクの完成度も着実に上がっていった。

株式会社ISTソフトウェア
ITサービス企画本部
ITサービス企画部
部長
谷中 大樹 氏

体操競技以外の種目への対応などさらなる機能拡充を予定

 こうしてスポテクを手に取る学校関係者が増えていくに従い、特に「体育の授業をより良いものにしたい!」という意識を強く持つ教員から多くの反響が寄せられたという。
 「実際に体育の授業の現場で使ってみて、着実にその効果を実感していただいています。また『お手本動画の参照機能だけでもいいから使ってみたい』という、いわば『ライトユーザー層』の先生方からの要望も多く寄せられています」(水鳥氏)
 また三木氏も、「私が指導する体育の先生方や学生たちにも実際に使ってもらっていますが、とても評判がいいですね。特に学生たちはあっという間にアプリを使いこなせるようになって、その結果技の習得・理解のスピードが明らかに早くなりました」と大きな手応えを感じているという。
 なお今後は学校教育の現場だけでなく、民間の大手スポーツクラブなどでもスポテクを使った指導を普及させるべく、さらなる機能強化やコンテンツの拡充に努めていくという。
 さらには、器械運動以外の他のスポーツ種目への対応も現在進めており、2023年夏には水泳バージョンを、そして近く陸上バージョンもリリースする予定になっている。開発メンバーの一人であるISTソフトウェア ソリューション事業本部 SP事業部 営業部 部長 諸石大氏も、「多種目対応を含め、今後もスポテクの目指す理念の実現に向けて、MIZUTORI様とともに継続して開発に取り組んでいきたいと考えています」と今後の抱負を述べる。
 さらに水鳥氏は今後、スポーツ指導の現場だけでなく、広く社会課題の解決のためにスポテクを役立てていきたいと将来構想を語る。
 「コロナ禍に伴う子供たちの運動能力の低下や、部活動の地域移行など、現在運動を取り巻く社会課題が問題になっていますが、スポテクのようなICTを活用した仕組みはこうした課題の解決に大いに貢献できると考えています。ISTソフトウェアさんにはこれまで私たちの要望にとても真摯に応えていただきましたが、これからもぜひ伴走いただきながらICTを使った課題の“鮮やかな”解決を期待したいと思います」

株式会社ISTソフトウェア
ソリューション事業本部
SP事業部 営業部
部長
諸石 大 氏

お問い合わせ先

担当部門/株式会社ISTソフトウェア ITサービス企画本部

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