大分県大分市に本社を構え、大分県と宮崎県で20店舗のガソリンスタンドを経営する大分石油株式会社(以下、大分石油)。同社は1949年の創業以来、ガソリンスタンドを通じた石油の小売販売を主に手掛けるほか、石油の卸売や自動車部品販売などの事業を通じて地域経済に長らく貢献してきた。また近年では再生可能エネルギー事業も幅広く手掛けており、太陽光発電事業や風力発電事業の展開、さらには水素発電や地元大分県の地理的特性を生かした地熱発電の研究にも力を入れている。
現時点では売上の約9割を石油関連事業が占めており、同社の経理部門における業務の大半は石油関連商品の売掛管理や請求、販売分析などによって占められている。これらの業務を少しでも効率化するために、同社では早くから情報システムを導入・活用してきた。大分石油 代表取締役社長 永岡壯三氏によれば、その歴史は約30年にも及ぶという。
「約30年前にオフコンを導入し、システムに精通した1人の社員が弊社の業務プロセスに最適化した専用の勘定系システムを一から内製開発してきました。このシステムは石油販売事業に特有のプロセスや弊社独自のビジネスモデルに特化した機能を実装しており、業務現場の細かなニーズにも応えてくれたため非常に使い勝手が良く、ほかのシステムに置き換える必要性は感じていませんでした」
ただ、あまりにも長きに渡り利用し続けたため、システムの開発・運用を担当する社員の高齢化という問題が持ち上がってきた。オフコンというレガシー技術をベースにしていた上、アプリケーション内部の仕様も属人化しており、後継者もなかなか育成できなかった。そのため、この社員が定年退職した後もしばらくの間は業務委託としてシステムメンテナンスの任に当たってもらっていたが、そろそろ年齢も70歳近くになり、現行システムの運用をこれ以上続けるのはさすがに困難になってきた。
またシステムの使い勝手に問題はなかったものの、災害対策やデータ保護の面では以前から不安を感じていたと永岡氏は話す。
「オフコンを自社のオフィス内に設置していたため、災害対策の面では常に不安を感じていました。東日本大震災による津波被害の発生を受けて、データのバックアップを沿岸部から離れた立地のガソリンスタンドに保管するようにしましたが、それでも万全の対策とは言えないため、いずれはしっかりしたデータ保護体制を構築する必要があると感じていました」