神奈川県平塚市に本社を構える株式会社聖亘トランスネットワーク(以下、聖亘トランスネットワーク)は、関東・首都圏エリアを中心とするトラック輸送や、自社運営の物流倉庫を用いた倉庫保管・流通加工など、幅広い物流サービスを手掛ける運送企業。同社の最大の特徴は、単にモノを運ぶだけに留まらず、独自開発のITシステムを用いて付加価値の高い運送サービスを提供する点にある。
「2010年ごろから、業界に先駆けてデジタル技術を使って荷主と運送業者との間をマッチングできるようなITサービスを提供できないかと考え、トラックの位置をリアルタイムで可視化・共有できる動態管理システムを開発し、その後さらに配車作業を支援する配車・運行管理システムを開発しました」
こう語るのは、聖亘トランスネットワーク 代表取締役の山田裕氏。当初は外部のSI企業にシステムの開発を委託していたものの、現場のニーズにより即したシステムを実現すべく、内製開発に切り替えて自社ですべてを作り上げた。こうして出来上がった動態管理システムや配車・運行管理システムを、自社利用だけに留まらず、外部の企業にも積極的に提供していった。
それが、同社が現在販売している配車・運行管理システム「Trans Supporter with ST-Navi」だ。同システムは、クラウド環境上にサーバアプリケーションとデータベースを置き、トラックドライバーが携帯するAndroidタブレット端末にインストールしたアプリケーションとクラウドサーバとが通信を行うことでトラックの位置情報をリアルタイムで可視化できる。また最適な配車ルートを自動的に割り出したり、目的地への到着予定や渋滞情報などもリアルタイムに表示するなど、配車作業を強力にサポートする数々の機能を提供する。
同社は2012年にTrans Supporter with ST-Naviの提供を開始したが、当時はまだ類似のサービスがほとんど存在せず、またクラウドの利用も今日ほど普及していなかった。
「当時はクラウドについての予備知識はほとんどありませんでしたが、自社環境内にサーバを置く方式ではセキュリティやスケーラビリティの面でいずれ課題に突き当たることは明白でした。そこで、外部からのアクセスを安全かつ安定的に処理できるシステム基盤の方式を検討していった結果、自ずとクラウドに行き着きました」(山田氏)
