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登録義務化・レベル4飛行解禁|航空法によるドローン規制の現在地を弁護士が解説

2022年09月01日制度・法律

2022年6月20日より、100g以上のドローンの登録が義務化されました。また、現行の航空法では禁止されている有人地帯における目視外飛行(いわゆる「レベル4」飛行)も、2022年12月から一部解禁が予定されています。

ドローンに関する法規制は速いスピードで変化するため、趣味やビジネスでの利用を考えている方は、最新の法改正にキャッチアップしなければなりません。

今回は、2022年に施行される航空法の改正により、ドローン規制がどのように変化するのかをまとめました。

2022年6月20日施行|ドローン(無人航空機)の登録制度について

2022年6月20日より、新たにドローン(無人航空機)の登録制度が施行されました(航空法131条の3以下)。

無人航空機の登録制度により、100g以上の重量を持つドローンを屋外で飛行させる場合には、原則として国土交通大臣の登録を受けなければなりません。

●無人航空機の登録制度の目的
無人航空機の登録制度が新設された目的は、主に以下の3点です。
(1)事故発生時などにおける所有者の把握
 ドローンによる事故が発生した際に、加害者である所有者を追跡して、民事・刑事上の責任を追及できるようにする目的があります。
 
(2)事故の原因究明
 ドローンの所有者を追跡し、事故に至った原因などを調査することで、事故原因の究明に役立てる目的があります。
 
(3)安全上問題のある機体の飛行を禁止すること
 登録審査の段階で、安全上問題のあるドローンの登録を拒否し、飛行を禁止することで安全を確保する目的があります。


●登録義務の対象となる無人航空機の要件
屋外飛行に当たって登録が義務付けられるのは、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができる無人航空機のうち、機体本体およびバッテリーの重量が合計100g以上のものです(航空法2条22項、航空法施行規則5条の2)。

なお、登録対象となる無人航空機には、一部の例外を除いてリモートID機器を搭載しなければなりません。
このリモートID機器が外付けの場合には、当該機器の重量を含めずに、あくまでも機体本体およびバッテリーの重量が合計100g以上であるかどうかによって登録の要否を判定します。

●無人航空機の登録手続き
無人航空機の登録申請は、オンラインまたは書類提出によって行います。

オンライン申請の場合は、ドローン登録システムを通じて行います。具体的な申請方法については、以下の国土交通省ウェブサイトやYouTube動画をご参照ください。

参考:
ドローン登録システム|国土交通省
https://www.dips-reg.mlit.go.jp/drs/top/init
参考:
無人航空機の登録方法|MLIT channel(国土交通省の公式YouTubeチャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=tJRV9o9ossc&t=20s

また、国土交通省のヘルプデスクでも登録手続きに関する問い合わせを受け付けているので、不明な点がある場合には以下の番号へご連絡ください。
<無人航空機の登録に関するヘルプデスク>
電話 (平日9時00分〜17時00分(土日祝除く))
050-5445-4451


●無登録の無人航空機を飛行させた場合の罰則
登録を要する無人航空機を、無登録のまま屋外で飛行させた場合には、航空法違反により罰せられます。
無人航空機の無登録飛行に関する罪の法定刑は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(航空法157条の4)。

2022年12月5日解禁予定|「レベル4」飛行に関する法規制のポイント

2021年6月には、すでに「レベル4」飛行の一部解禁を内容とする改正航空法が成立・公布されています。

同改正法は、2022年12月5日に施行される予定です。レベル4飛行は、物流や災害支援などに関する利用可能性への期待度が高く、解禁によってどのような事業展開が行われるのかが注目されます。

●ドローン飛行に関する4段階の「レベル」とは
ドローンの屋外飛行は、以下の4段階のレベルに分類されます。
(1)レベル1
 目視の範囲内で、操縦によりドローンを飛行させる方法です。
一部の飛行方法を除いて、特段の許可・承認等を要することなく行うことができます。
(2)レベル2
 目視の範囲内で、ドローンを自動・自律飛行させる方法です。
一部の飛行方法を除いて、特段の許可・承認等を要することなく行うことができます。
(3)レベル3
 無人地帯において、目視の範囲外でドローンを自動・自律飛行させる方法です。
現行法では飛行ごとの許可・承認が必要とされていますが、改正法により要件の緩和が予定されています。
(4)レベル4
 有人地帯において、目視の範囲外でドローンを自動・自律飛行させる方法です。
現行法では認められていませんが、改正法によって一部解禁される予定です。


特にレベル4が解禁されると、宅配サービスや災害支援などを含めて、ドローンの活躍範囲が飛躍的に拡大することが期待されています。

●ドローンをレベル4飛行させるための要件
2022年12月5日に予定される改正法の施行後、ドローンをレベル4飛行(特定飛行)させるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
(1)機体認証を受けたドローンを使用すること
 ドローンをレベル4飛行させるには、国土交通大臣の機体認証を受けたドローンを用いる必要があります。
機体認証には「第一種機体認証」と「第二種機体認証」の2つがありますが、立入管理措置の免除を受けるためには、第一種機体認証の取得が必要です(改正航空法132条の13第2項、132条の85第1項)。

(2)技能証明を受けた者が飛行させること
 ドローンをレベル4飛行させられるのは、国土交通大臣の技能証明を受けた者に限られます。
技能証明には「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2つがありますが、立入管理措置の免除を受けるためには、一等無人航空機操縦士の取得が必要です(改正航空法132条の42、132条の85第1項)。

なお、技能証明を受けた者がレベル4飛行を行う際には、技能証明書を携帯することが義務付けられます(改正航空法132条の54)。

(3)運航ルールに従うこと
 ドローンのレベル4飛行に当たっては、以下の運行ルールを遵守しなければなりません。
 (a)飛行計画の通報
  飛行日時・経路などを定めた飛行計画を、原則として事前に国土交通大臣へ通報しなければなりません(改正航空法132条の88)。

 (b)飛行日誌の作成
  レベル4飛行の際には、飛行日誌の作成・保管が義務付けられます(改正航空法132条の89)

 (c)事故発生時の危険防止措置
  ドローン事故が発生した場合、直ちにドローンの飛行を中止し、負傷者の救護など危険防止のために必要な措置を講じなければなりません(改正航空法132条の90)。

 (d)事故の報告
  航空機との衝突・接触のおそれがあった場合や、その他ドローン事故のおそれのある事態が発生した場合には、国土交通大臣にその旨を報告しなければなりません(改正航空法132条の91)。

まとめ

ドローンの登録制の新設、およびレベル4飛行の一部解禁により、ドローンをより安全かつ便利に運航するための法制度が整いつつあります。

しかし、実際に法制度がどのように機能するのか、将来的にどのような見直しを行うべきかについては、施行後の状況を注視することが必要です。
事業者によるドローンを利用したサービスの開発・展開も含めて、今後の動向を楽しみにしたいと思います。

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

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