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ドローン規制強化はいつから?航空法改正の内容と展望を弁護士が詳しく解説

2021年10月20日制度・法律

ドローン(無人航空機)は、幅広い分野での活用可能性が大いに期待されています。
その反面、ドローンの操縦には墜落などの危険が伴うため、主に航空法によってさまざまな規制が設けられています。

ドローンの活用範囲が広がるに連れて、法規制の内容もアップデートしていくことが必要です。
そのため、各関係機関や国会において、航空法改正の議論が活発に行われています。

そこで今回は、ドローンに関する航空法の規制の現状と、今後予想される法改正の内容について解説します。

ドローンに対する規制が必要な理由

ドローンは、空路を機動的に移動できる点で画期的である反面、以下の理由から適切に規制する必要性があります。
航空法によるドローン規制は、以下の各リスクを解消・コントロールするために設けられているものです。

墜落の危険があるため

ドローンは、操縦ミス・電池切れ・機器の不具合などによる墜落の危険性が常に存在します。
そのため、ドローンの墜落を防止するような法規制を施すことが必要です。

航空法では、墜落によって人体・航空機などへ影響が生じることを避けるため、ドローンの飛行区域に制限がかけられてます。
さらに、墜落の危険を伴う一定の飛行方法を原則として禁止し、機体・操縦者の技量・安全確保体制などを審査したうえで個別に許可するものとされています。

敷地権やプライバシーなどを侵害するおそれがあるため

また、他人が所有する敷地の上空へドローンが侵入した場合、敷地権などの侵害に当たり得るほか、周辺住民のプライバシーを侵害することにも繋がりかねません。

つまりドローンの操縦には、他人の権利に対する侵害の危険性が潜んでいるのです。
航空法によるドローン規制の主眼は墜落防止にありますが、このような他人に対する権利侵害のリスクを回避する狙いも、副次的に存在すると考えられます。

航空法によって規制される「無人航空機」は重量200グラム以上

航空法上の規制対象となる「無人航空機」に当たるのは、以下のすべてを満たす機器です(航空法2条22項、航空法施行規則5条の2)。

飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船のいずれかに該当すること
構造上、人が乗ることができないこと
遠隔操作または自動操縦により飛行させることができること
200グラム以上であること

したがって、ドローンの機能を備えていたとしても、200グラムに満たない機器の場合は、航空法上の飛行区域制限や飛行方法制限が適用されません。
航空法上の規制対象外となる機器の典型例としては、ラジコンやマルチコプターなどが挙げられます(重量200グラム未満の場合に限ります)。

ドローンの飛行区域に関する制限|一部の空域は許可制

航空法によるドローン規制の大きな柱の一つが、飛行区域に関する制限です。

ドローン墜落時の危険が大きいと考えられる、以下の3つの空域については、ドローン飛行が国土交通大臣の事前許可制とされています。
空港などの周辺の上空の空域(航空法132条1項1号、同法施行規則236条1号~3号)
 空港周辺の空域では、ドローンが旅客機などと衝突する危険性があります。

旅客機との衝突は、乗客や地上にいる人・建物などに対して甚大な被害をもたらすおそれがあるため、空港周辺の空域ではドローン飛行が事前許可制となっています。

150メートル以上の高さの空域(航空法132条1項1号、同法施行規則236条4号)
 衝突が発生する高度が高ければ高いほど、ドローン墜落時の衝撃が大きくなり、当然人体や建物などに対する被害も大きくなります。

そのため、150メートル以上の高度でドローンを飛行させる場合には、国土交通大臣の事前許可を得なければなりません。

人口集中地区の上空(航空法132条1項2号、同法施行規則236条の2)
 国勢調査の結果によって指定される「人口集中地区」の上空は、ドローン飛行が事前許可制とされています。
人口が多く、家屋が密集している地域では、ドローンの墜落によってより多くの被害が発生する可能性が高いためです。

ドローンの飛行方法に関する制限

航空法によるドローン規制の2つ目の柱は、飛行方法に関する制限です。

墜落の危険や、他人に与える迷惑などを考慮して、一部の飛行方法が禁止または承認制とされています。

禁止されている飛行方法

以下の方法によるドローン飛行は、墜落の危険性が高く、また他人に与える迷惑がきわめて大きいものとして、一律禁止されています(航空法132条の2第1項第1~4号)。
飲酒時にドローンを操縦すること
飛行前にきちんと点検をせずドローンを飛行させること
航空法所定の安全確保措置を講ずることなくドローンを飛行させること
飛行上の必要がないのに高調音を発したり、急降下したりするなど、他人に迷惑を及ぼすような方法でドローンを飛行させること

国土交通大臣の事前承認を要する飛行方法

さらに、以下の飛行方法については原則禁止とし、機体の機能や性能・操縦者の知識や技能、安全確保体制などを審査したうえで、国土交通大臣の承認を個別に受けるべきものとされています(航空法132条の2第1項第5~10号)。
夜間飛行(日没から日の出まで)
目視外飛行
人・建物・自動車などとの距離が30メートル未満の空域での飛行
多数の人が集まる催しの上空での飛行
爆発物などの危険物を輸送しながらの飛行
ドローン飛行中の物件投下

2022年を目処に予定されている法改正|レベル4飛行の解禁・ライセンス制

適切な法規制の下で、ドローンの活用可能性をさらに広げるため、2022年を目処に「レベル4飛行」の解禁を含めた法改正が検討されています。

「レベル4飛行」とは、有人地帯におけるドローンの目視外飛行(目視により常時監視することなく飛行させること)を意味します。
現行の航空法では、無人地帯における目視外飛行は国土交通大臣の事前承認制、有人地帯における目視外飛行は一律不可です。

しかし、有人地帯における目視外飛行は、墜落などによるリスクが非常に高い反面、以下の例のように、産業・運輸・防災などの観点からきわめて高い有用性が指摘されています。
  • 都市の物流、軽微
  • 災害発生直後の救助、避難誘導、消火活動の支援
  • 都市部のインフラ点検
など

すでに閣議決定された航空法の改正案では、新たに「無人航空機操縦士」(一等・二等)の資格を設けて、資格取得者にはレベル4飛行を認める条文が盛り込まれています。
以下のリンクを参考にして下さい。

航空法等の一部を改正する法律案を閣議決定~航空ネットワークの確保と航空保安対策、ドローンの更なる利活用を推進!~|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku01_hh_000110.html

今後ドローンを活用した事業を展開する際には、レベル4飛行に関するライセンスの取得や、安全にレベル4飛行を実施する体制の整備などがポイントとなるでしょう。

まとめ

ドローン規制に関する法律のアップデートは、技術や社会での活用状況を踏まえて、今後も定期的に行われるものと考えられます。
現在も航空法改正案が国会で審議中であり、近いうちに情報が更新される可能性が高いので、国会での審議状況や政府の発表に注目しておきましょう。

ドローンを活用しようとする事業者や、趣味でドローンを楽しもうとする方は、ドローン規制に関する最新事情を正しく理解しておくことが大切です。
今後の法改正動向にも注意を払いつつ、規制に従って安全にドローンを利用してください。


阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。
注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。
その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

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