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2021年10月13日働き方改革
筆者が"テレワークの孤独"問題を強く意識したきっかけは、元部下だった複数の人物から、相次いで連絡をもらったことでした。
優秀な若手が、なぜテレワークでつぶれてしまうのでしょうか。
―― わからないことを上司に質問しづらいから?
―― 同期の様子がわからずに不安だから?
どちらもよく聞くことではありますが、苦悩している元部下たちの話を実際に聞きながら気付いたのは、2つのポイントでした。
1つめのポイントは「実は劣等感が強い」ことです。
ここで強調しておきたいのは、人が抱える劣等感や苦悩の強さは、他人にはうかがい知れないということ。
「えっ、劣等感が強いとは、まったく見えないけど――」
という人に限って実は自信がなく、その自信の弱さが"優秀と評価されるパフォーマンスの原動力"になっているケースは多いものです。
なぜ劣等感が強い人がテレワークでつぶれやすいのかといえば、今まで無意識のうちに受け取っていた「小さな承認」の積み重ねが、失われるからだと考えられます。
小さな承認の例を挙げてみましょう。
▼ 小さな承認の例
2つめのポイントは「一人暮らし」であることです。
「家族と同居しているがゆえのテレワークの悩み」が語られることは多くありましたが、意外と盲点となっているのが、一人暮らしならではの苦悩です。
若手社員は、実家を離れて一人暮らししていて、自分の家庭を持っておらず、ペットなどもいない環境で仕事をしている人が多く見られます。
一人暮らしのテレワークと、一人暮らしではないテレワークでは、"孤独感の感じ方に大きな差が出る"ことは、ここで明確に理解しておきたいところです。
言われてみれば当然かもしれませんが、意外とスルーされているポイントであると思います。
ここでデータを見てみましょう。
「テレワークでコミュニケーション不足やストレスを感じる人は27.1%」
という調査結果が出ています。
引用)内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」P27
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/shiryo2.pdf
を元に筆者作成
さらに「社内での気軽な相談・報告が困難」「取引先等とのやりとりが困難」と感じる人は、それぞれ3割を超えていることがわかります。
こういったストレスは、若手社員の孤独を生み出す一因になっているといえるでしょう。
ところで、こういったテレワークにまつわる調査データは多数発表されていますが、ご提案したいのは"データを深掘りしながら見ること"です。
コロナ禍を経て本格的なテレワーク導入時代を迎えたいま、表面的に見えている事象から連なる、"本当の問題"に目を向けるときではないでしょうか。
例えば、"社内での気軽な相談・報告が困難と感じている人が多い"と聞いても、
「それは、そうだろうね」
くらいの感想しか出ないものです。
しかし、
「アンケートでそう答える人たちの、心の奥にある本音は何か?」
と深掘りして想像すれば、孤独を抱える若手の苦悩であったり、あるいは別の新しい発見といった気付きにつながるでしょう。
ここでひとつ質問があります。
あなた自身は「テレワーク推進派」でしょうか。もしそうなら、少し注意が必要です。
会社の方針や経営戦略という視点はさておき、個人の個性や価値観に照らし合わせて「テレワークが好き、得意」という上司ほど、部下のテレワークの孤独に気付きにくくなります。
テレワークが得意な人の特徴を挙げてみましょう。
▼ テレワークが得意な人の特徴(例)
では、テレワークのマネジメントで重要なものとは、何でしょうか。
ひとつ挙げるなら「想像力」です。
テレワークの課題解決策としては、第一に各種クラウドサービスをはじめとするデジタルテクノロジーの導入が検討されることが多いでしょう。
テクノロジーの活用はもちろん有効ですが、しかし"テクノロジーありき"になってしまっては、本当の問題解決には至りません。
テレワークのマネジメントは、十分な想像力を働かせて解決すべき課題を抽出し、そのためのテクノロジーを導入、という流れで行うべきといえます。
お互いの顔が見えにくくなるテレワーク。それを埋めるのはテクノロジーの前に想像力である――。
そんな意識を持っていれば、テクノロジーの活用方法も変わってくるはずです。
なぜ、かつての部下たちが、今は一緒に働いていない筆者へ苦悩を打ち明けたのでしょうか。
その理由を考えると、
「職場でテレワークになじめないことを知られたら、低評価につながる」
という恐れがあるのではないでしょうか。
しかし、テレワークとの相性は個人の能力よりも、個性や価値観に寄るところが多いと感じます。
企業が、優秀な若手をテレワークの孤独によって失わないための第一歩は、"テレワークになじめなかったとしても、それを堂々と言える環境づくり"といえるかもしれません。
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