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ドローン国家資格化で何が変わる? 操縦士を目指す人が身につけるべきスキルとは

2022年02月16日解説

2021年に航空法の一部改正を盛り込んだ法律案が閣議決定され、ドローンの飛行や操縦士についてのルール作りが本格化しました。
ドローン操縦はいま、新しいビジネスチャンスとして注目され、各地にドローンスクールも相次いで設置されています。

一方で、一部のドローン操縦について国家資格化される方針も打ち出されています。

これからドローン操縦士を目指す場合、どのような勉強が必要なのか、どんなスキルを身につければ良いのかをご紹介していきます。

ドローンの活躍フィールドと「レベル4」って何?

ドローンは、当初はホビーの一環として流通しはじめたものですが、今では画像や動画の撮影は日常的なものになり、また、荷物の無人配達への応用実験も進んでいるところです。

それ以外に、ドローンが活躍しそうなフィールドの広さは計り知れません。

ざっと挙げてみるだけでも、
  • 農業=農薬散布など
  • 建設=測量、点検、進捗状況の観察
  • 医療=医薬品配達
  • 防災=気象観測、火山口などの定点観測、地理観測
  • 災害対応=被災地の状況確認、物資輸送

などがあります。

人が行うには危険な作業を担ったり、人が行うとコストや時間がかかりすぎたりする現場でおもに活躍します。また、ICTやAIの進歩によって、正確な自動制御が可能になっていくことも魅力のひとつです。
他にも、ドローンの活用方法は事業者のアイデアの数だけ存在すると言えるでしょう。

しかし、現行法ではドローンはいつでもどこでも飛ばせるというわけではありません(図1)。

図1 ドローンが飛行可能な条件と飛行レベル
(出所:「無人航空機に係る制度検討の経緯について」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001351989.pdf p4

よく、ドローン飛行の「レベル4」という言葉を耳にするかと思いますが、この「レベル4」とは、上の図の通り「有人地帯における目視外飛行」です。

人がいる場所では、無人地帯に比べれば墜落時に大きな危険を伴います。また、機体を目視できない場所に飛ばすということも同様です。
言ってみれば「最も高い技術」が必要な飛行エリアでドローンを制御できる技術が必要な場所なのです。

しかし、災害時などを考えれば、レベル4での飛行が可能になればドローンはさらに大きな可能性を持つことになります。
よって、レベル4での飛行を可能にする法整備を進めていこう、というのが今の政府の動きであり航空法改正に繋がっています。

2022年、ドローン操縦は国家資格が必要になる?

ドローン操縦士に国家資格が必要になる--。

これも大きな話題になっています。これは「レベル4」を意識した制度設計で検討されているもので、娯楽のための飛行にまで国家資格が必要ということでもありません。

現在は、このような体制が検討されています(図2)。

図2 飛行レベルごとの条件
(出所:「無人航空機に係る制度検討の経緯について」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001351989.pdf p10

注目すべきは上図の「カテゴリーⅡ」と「カテゴリーⅢ」です。レベル4を含むリスクの高い飛行について、操縦者にライセンスを求める方針で議論が進んでいるのです。
これにより、夜間飛行が解禁される可能性もあります。

この場合、「国が操縦者の能力を、学科や実地試験により操縦者の知識・能力を判定し証明する制度を導入」*1するとしています。これが「国家資格化」とよく言われているものです。
資格取得については、現在ある民間スクールなどを活用する方針です。

ドローンビジネスとライセンス

さて、このライセンスを取得することで何が可能になるのでしょうか。
まず、レベル4相当エリアでの操縦ができる資格試験には、身体検査も盛り込まれる予定です(図3)。

図3 操縦国家資格の取得イメージ
(出所:「レベル4飛行の実現に向けた新たな制度整備等」首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai16/siryou1.pdf p4

学科、実地での試験だけでなく身体検査まで実施するというのは航空機のパイロットのような過程ですが、これをクリアすることで他の操縦士との差別化ができますから、ビジネスチャンスは広がることでしょう。

なお、ドローンの性能はどんどん変化していくことも踏まえ、資格は更新制度を取る方針です。

資格があれば操縦士として儲けになる?

厳しくなりそうな試験ですが、では、この資格を持っていればドローン操縦士という職業で儲け続けることはできるのでしょうか?
皆さんの最大の関心事かもしれません。

筆者はこう考えます。

まず、ドローンビジネスは今後広がり続け、場合によっては操縦士不足ということも考えられます。よって、一定のライセンスを持つドローン操縦士にはある程度の引き合いがあることでしょう。

ただ、いつまでもそれが続くとも思えません。

というのは、先ほどご紹介したように、ドローンを事業に活用する魅力の一つは、「正確な自動制御が可能になっていく」ことです。

これは機体側が進化してくれば叶えられてしまうのと同時に、人間の操縦よりも正確であり便利なものになってしまいます。

では、いずれ時が来れば役に立たない資格になってしまうのか?

そうとも言い切れません。

人間には、「AIにできないことをできる」という有利性もあります。
よく「AIで人の仕事はどのくらい奪われるか」という議論がありますが、単にドローンを操縦するスキルだけではAIに飲まれてしまう可能性は大いにあります。

しかし、「人間ならではの柔軟性」を同時に身につけたいものです。

例えば、ただ飛ばすだけでなく撮影のセンスが良いというクリエイティビティ、無線の知識がある、建築士の資格を持っている、農業の知識を持っている、特定の業界に詳しく、プラスアルファの知識を提供できる...といった具合です。

このような「合わせ技」があればまた事情は異なるでしょう。
とくにクリエイティビティは重宝されることでしょう。


話は少し変わりますが、筆者の知人の介護福祉士は、介護福祉士であると同時にアロマコーディネーターの資格も取得しています。
これを合わせ技として、介護施設に特化したアロマセラピーやマッサージの事業を立ち上げようとしています。

こうした新しいビジネスチャンスの開拓を考えながらドローンのスキルを獲得していく、そのような姿勢が将来的には求められることでしょう。


*1「無人航空機に係る制度検討の経緯について」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001351989.pdf p12



清水 沙矢香

福岡県出身。2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や統計分析を元に各種メディアに寄稿。

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