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SDGsへの取り組みは現実を正しく知ることから 意外なデータの数々を紹介

2022年09月28日解説

「SDGs」に取り組んでいる、あるいは関心を持っている企業は多いことと思います。
一方で、みなさんが認識している「SDGsの詳細」はどのようなものでしょうか。

地球温暖化や環境問題、貧困問題については日本でも多くの人が認識しやすいことでしょう。
しかし、その他のゴールについては、日本にいては思いが至らない項目も多くあります。

そこで今回は、SDGsの対象になっている他の項目についても、現状をご紹介したいと思います。

SDGsには17の項目がある

そもそもSGDsとは何か。2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、下の「17のゴール」が設定されています。下の図を見たことのある人は多いことでしょう(図1)。

図1 SDGsの「17のゴール」
(出所:「SDGsとは」内閣府地方創生サイト)
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/index.html

しかし、この17項目をひとつひとつ確認したという人は少ないのではないでしょうか。

1)貧困をなくそう
2)飢餓をゼロに
3)すべての人に健康と福祉を
4)質の高い教育をみんなに
5)ジェンダー平等を実現しよう
6)安全な水とトイレを世界中に
7)エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8)働きがいも経済成長も
9)産業と技術革新の基盤をつくろう
10)人や国の不平等をなくそう
11)住み続けられるまちづくりを
12)つくる責任 つかう責任
13)気候変動に具体的な対策を
14)海の豊かさを守ろう
15)陸の豊かさも守ろう
16)和と公正をすべての人に
17)パートナーシップで目標を達成しよう
というのが具体的項目です。

「SDGs」というと、環境問題に目が行きがちです。しかし、他にもこれだけの項目があり、それぞれの問題は世界的にはかなり深刻なものになっています。日本にいては実感しにくいものも多いことでしょう。
そこで、いくつかの項目についての意外なデータをご紹介していきます。

安全な水とトイレを世界中に

6番目に「安全な水とトイレを世界中に」という項目があります。
乾燥地帯の国で、子どもが遠い場所まで水を汲みに行く、そういった映像を目にしたことのある人は多いかと思います。

では、世界にどれだけ水に困っている人がいるのでしょうか。
世界では、12億人が安全な水を利用することができません*1。

なお、国際連合人口基金(UNFPA)が2発表した「世界人口白書2022」によると、2022年の世界人口は79億5400万人*2ですから、世界では約6.5人にひとりが安全な水を利用できないということになります。

また、このようなデータもあります(図2)。

図2 基礎的な衛生施設を継続的に利用できない人の割合(出典:「令和元年版 日本の水資源の現況」国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/001315700.pdf p111

改善傾向にはあるものの、トイレなどの衛生施設を継続して利用できない人の割合は、2015年の段階で世界人口の32%、つまり3人に1人にのぼっています。

また、注目したいのは地域です。アフリカや南アジアといった地域の衛生環境については想像しやすい方も多いと思いますが、水問題はオセアニアでも深刻なのです。

つくる責任 つかう責任〜日本のプラごみはもう行き場がない

環境問題についても、あまり知られていない事実があります。
近年、日本でもレジ袋が有料になりました。筆者の周辺ではこれを「無駄だ」という人もいるのですが、プラスチックごみに対して、実は日本は「無責任」とも言える国です。

日本の使い捨てプラスチックごみ排出量は世界4位です。
そして、これらが完全にリサイクルされているわけではなく、これまでは廃プラスチックを海外に輸出し再利用してもらうという方法で解消してきました(図3)。「海外に押し付けていた」とも言えるでしょう。

図3 日本のプラスチックごみの輸出量
(出所:「プラスチックを取り巻く国内外の状況」環境省)
http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-2x.pdf p12

しかし上の図では、2018年に入り、中国への輸出が激減していることがわかります。
これは中国が2017年7月に「固体廃棄物輸入管理制度改革実施案」を公表、2017年末までに環境への影響が大きい固体廃棄物の輸入を禁止する措置を取ったためです。

プラスチックごみの輸出に関してはさまざまな規制が進み、現在では日本のプラスチックごみは輸出先を失い、行き場をなくしているのです。
国際問題というよりも、日本単独の問題にもなっているとも言えます。他人事ではありません。

ジェンダー平等を実現しよう

「ジェンダーギャップ指数」。耳にしたことのある人も多いでしょう。そして、日本はこの指数が低いこともよく報道されています。
では、日本のジェンダー平等はどれくらい遅れているのでしょうか。そして、ジェンダー不平等によって何を失っているのでしょうか。

世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダーギャップ指数では、日本は146か国のうち116位でした(図4)。

図4 ジェンダーギャップ指数の国際比較
(出所:「男女共同参画に関する国際的な指数」内閣府)
https://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/index.html

指数が高いほど男女平等という指数ですから、日本のジェンダー平等がいかに遅れているかがわかります。

さて、ここに興味深いデータがあります。
クレディ・スイスがリーマン・ショック後の経済状況について調査したもので、女性取締役の有無と企業のパフォーマンスの関連を示しています(図5)。

図5 リーマンショック前後の企業株式パフォーマンス
(出所:「成長戦略としての女性活躍の推進」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/practice/pdf/2014november.pdf p14

上のグラフは、赤線が「女性取締役が1人以上いる企業」、青線が「いない企業」の「株価パフォーマンス(=その企業に投資した場合の収益の高さ)」の違いを示したものです。

リーマンショック後の株価パフォーマンスが、女性取締役がいる企業のほうが良かったことがわかります。

下のグラフは逆に、青線が「女性取締役が1人以上いる企業」、赤線が「いない企業」の株価指数を比較したものです。

女性取締役がいる企業つまり青線のほうが、いない企業に比べて株式パフォーマンスで26%上回っているという結果です。

もちろん、それぞれの企業の中で具体的にどのような事情があったのか、経営陣としての男女の振る舞いがどう違うのかといった詳細は汲み取れませんが、偶然と呼ぶにしてはあまりにも大きすぎる違いが出ているのは事実です。

SDGsを「きれいごと」と捉えないためにも

SDGsというと特定の分野に関心が集中しがちです。しかしSDGsのテーマは非常に幅広く、「環境問題」という大きなものでなくとも、身近に実行できること、小さな努力を積み重ねていくことはできるのではないでしょうか。

国際的なさまざまな問題については断片的な情報はあっても、「数字」として見る機会はあまりないことかと思います。

ここでご紹介したのはごく一部のものでしかありませんが、データとして現実を知り、参考にしていただければ、と筆者は願います。





*1
「水資源に関する世界の現状、日本の現状」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001020285.pdf p2
*2
「世界人口白書2022」国連人口基金 駐日事務所
https://tokyo.unfpa.org/ja/SWOP2022

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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