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ブランドはSDGsとどう向き合うべきか?ブランディングの重要ポイント

2022年05月11日解説

持続可能な開発目標(SDGs)に代表される、社会の幸せに通じる取り組みへの呼びかけは、すべてのブランドにとって無視できないものとなっています。

しかしながら、いざSDGsに取り組もうとしても、
「ブランド活動へどう反映させたらよいだろうか」
と悩むブランド担当者が、少なくありません。

本記事では、ブランドマネジメント業務のなかでSDGsの取り組みをどう位置づけたらよいのか、考えていきたいと思います。

ベネフィット創出戦略として位置づける

結論からお伝えすると、
「ブランドのベネフィット創出の戦略」
に位置づけて、SDGsの取り組みをスタートさせると、スムーズに軌道に乗せやすいといえます。

ベネフィットとは?

そもそもブランドのベネフィット(Benefits)とは何かといえば、マーケティング用語として扱うときには『便益』と訳されます。

簡単にいえば、"顧客がブランドを通して受け取る有益なこと・プラスになること"が、ベネフィットです。

「顧客にどのようなベネフィットを届けるか?」は、ブランディングの要といえます。

アーカーのベネフィット3分類

1990年代、ブランド論の権威であるデービッド・アーカーは、ベネフィットには3つの分類があると提唱しました。

マーケティングに携わっている方であれば、おなじみかもしれません。

▼ アーカーのベネフィット3分類
  • 機能的ベネフィット(Functional Benefits)
  • 情緒的ベネフィット(Emotional Benefits)
  • 自己表現ベネフィット(Self-Expressive Benefits)
「機能的ベネフィット」は、性能や品質など、製品の機能に結びつくベネフィットです。たとえば洗濯洗剤なら"衣類の汚れが落ちる"は、機能的ベネフィットといえます。

「情緒的ベネフィット」は、顧客の感性に結びつくベネフィットです。たとえば"アロマの香りで気持ちが安らぐ"などが考えられます。

「自己表現ベネフィット」は、顧客の「こんな自分でいたい」という自己表現の欲求に結びつくベネフィットです。たとえば"清潔感がある人でいたい"といった欲求を満たします。

「機能性ベネフィットだけに執着するな」の教え

ベネフィット3分類の背景にある重要なメッセージは、
「機能性ベネフィットだけを重視していても、強いブランドはつくれない」
という事実です。
「顧客にとって、ベネフィットとは"機能性"だけではない。
"情緒的"ベネフィットや"自己表現"ベネフィットを創造しなければ、
顧客の支持は得られないし、競合ブランドにシェアを奪われてしまう」
と、アーカーのベネフィット3分類は教えてくれます。

多くのブランド担当者が、機能性ベネフィットにこだわりすぎず、情緒的ベネフィットや自己表現ベネフィットを生み出そうと尽力してきました。

4つめのベネフィットが登場

さて、アーカーがベネフィット3分類を提唱してから20年がたち、2014年の著書『ブランド論』では追加されているベネフィットがあります。それが「社会的ベネフィット(Social Benefits)」です。

▼ アーカーのベネフィット3分類→4分類へ
  • 機能的ベネフィット(Functional Benefits)
  • 情緒的ベネフィット(Emotional Benefits)
  • 自己表現ベネフィット(Self-Expressive Benefits)
  • 社会的ベネフィット(Social Benefits)
社会的ベネフィットの解説を『ブランド論』から引用しましょう。

ブランドは、人を社会的集団に所属させることができ、したがって、社会的便益をもたらすことができる。「このブランドを買うとき、または使うとき、私は○○○タイプの人たちの仲間である」----。社会的便益は強力である。というのも、自分のアイデンティティや所属という感覚----非常に根源的な人間の原動力----をもたらすからだ。

*1

たとえば洗濯洗剤で、
「このブランドを買う私は、グリーンコンシューマー(環境に配慮する消費者)たちの仲間である」
と感じさせたなら、それは社会的ベネフィットといえるでしょう。

SDGsを社会的ベネフィット創出のヒントとして使う

話はSDGsに戻ります。

ブランド担当者としてSDGsに向き合うとき、
「ブランドの全体戦略のなかで、『社会的ベネフィット創出』の目的達成のためにSDGsを使う」
というやり方なら、ブランドに利益をもたらしながらSDGsの活動をスタートできます。

なぜブランド戦略として位置づける必要があるのか

「とにかくSDGsだ」という掛け声のもと、ブランドの全体戦略と紐付けることなく、取り組みをスタートさせる。そんな姿勢のブランドも存在します。

しかし、ブランドを成長させるための全体戦略上でSDGsがどう役立つのか、立ち位置を明確にしたほうが成功しやすいといえます。

なぜなら、会社にもたらす収益とそのロジックがなければ、やがて活動自体が持続不能に陥るからです。

ブランドに利益をもたらす道筋をつけておくことで、SDGsへの取り組みがサステナブルになります。

SDGsは社会的ベネフィットと相性がよい

SDGsをブランド戦略に取り込むうえで、使い方はさまざまあります。

そのなかで「社会的ベネフィット」の創出での活用をご提案している理由は、SDGsと社会的ベネフィットは相性がよいからです。

前述のとおり、
「このブランドを買うとき、または使うとき、私は○○○タイプの人たちの仲間である」
と感じさせるのが、社会的ベネフィットでした。

いま、SDGsに向けて行動を起こす人、起こしたいと考える人が増えています。

SDGsに取り組んでいるブランドを選ぶことは、顧客にとって、
「私は、SDGsに取り組んでいる人たちの仲間である」
という社会的ベネフィットとなるのです。

「"私たちの顧客の社会的ベネフィット"になり得るのは?」という視点

具体的な実践の第一歩は、「"私たちの顧客の社会的ベネフィット"になり得るのは?」という視点から、SDGsを眺めてみることです。


*2


目標1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2.飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
目標3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4.すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する
目標5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児の能力強化を行う
目標6.すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7.すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
目標8.包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9.強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標10.各国内および各国間の不平等を是正する
目標11.包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する
目標12.持続可能な生産消費形態を確保する
目標13.気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15.陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16.持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17.持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

*3

自社ブランドの顧客が当事者となり得る問題、興味関心が高い問題ほど、"ブランドにとって重要度が高い"と判断し、優先させていきます。

社内で議論・検討して優先課題が決まったら、目標KPIを設定して具体的なアクションへと落とし込み、実行フェーズに移ります。

SDGsに対する活動の進捗は、定期的に社内外に発信し、SDGsへの貢献を目指していきましょう。

最後に

本記事では「SDGsとブランド」をテーマにお届けしました。

筆者個人的には、SDGsをはじめとする"社会の幸せ"を追求する活動は、ブランドの競争力をつけるうえで大変有効だと感じています。

なぜならば、社会の幸せを追求して得られた信頼はコピーできないからです。

技術やアイデアは、競合ブランドに模倣されるかもしれません。しかし、信頼までは模倣できないのです。

と同時に、この信頼は「SDGsに取り組んでいます」と"ポーズ"をとってブランディングだと言い張ったところで、得られません。顧客はポーズを見抜く賢明さを持っています。

真にブランドの利益につなげるためには、ポーズのレベルでは到底足りず、本腰を入れてSDGsに取り組むこととなります。

結果として、私たち皆が「SDGsに取り組んでいる仲間である」といえるようになったなら、社会の幸せが実現するに違いありません。



注釈
*1
出所)デービッド・アーカー『ブランド論』 (p.119). Kindle 版.

*2
出所) 国連広報センター「SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン」
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/

*3
出所)国連広報センター「持続可能な開発目標」
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/sustainable_development_goals/

三島つむぎ

ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。


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