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オンプレミス?クラウド? データ防災の観点から見た双方のメリット

2022年07月20日データセンター

システムやデータの保管方法はどうするのが良いのでしょうか。


近年はクラウドへの移行が進む一方、グーグルがデータ保存の媒体として「磁気テープ」を活用することが話題になっています。いったいなぜでしょうか。

現代にあって「磁気テープ」とはずいぶん古い響きに感じる人は多いと思いますが、ここには重大な理由があります。

その背景と、「データ防災」からみたオンプレミスとクラウドの違い、双方のメリットについて解説します。

クラウドへの移行は年々増加

総務省の「令和3年版 情報通信白書」によると、クラウドサービスを利用する企業の割合は年々増加しており、2020年には68.7%の企業が全社的、あるいは事業所や部門単位でクラウドサービスを導入しています(図1)。

図1 クラウドサービスの利用状況
(出所:「令和3年版 情報通信白書」総務省) p.314
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n4200000.pdf

企業活動の中で扱うデータ量が急増していくなかで、やはりクラウドの魅力は自社で設備を持つ必要がないこと、管理・運用体制を自社で設けずに済むこと、場所を選ばずに利用できることでしょう。

そして、クラウドサービスの利用内訳はこのようになっています(図2)。

図2 クラウドサービスの利用内訳
(出所:「令和2年 情報通信白書」総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252140.html

ファイル保管先としてのクラウドサービスが注目されています。さらにクラウドサービスは登場したての頃に比べればコストも下がりつつあり、「思っていたよりも安く済んだ」という事例も、筆者がよく耳にするところです。従量課金であることもメリットのひとつです。

「磁気テープ」への回帰の理由

その一方で、新しい動きもあります。

グーグルがデータのバックアップに「磁気テープ」を導入していることが話題になっています*1。
実は中国の百度(バイドゥ)も磁気テープでのデータ保存を採用しています。「究極のオンプレミス運用」かもしれません。

「磁気テープ」というと今となっては一般消費者向けの商品は姿を消したものの、これらの大手がHDDではなく「磁気テープ」へ回帰するのには理由があります。

「オフライン」の強み

ひとつは、完全なオフライン媒体であることです。
データのリアルタイム更新ができないため読み込みの手間はかかりますが、サーバー攻撃対策として「オフライン」ほど強いものはないという理由です。

HDDのオンプレミス運用はクラウドよりもセキュリティ面で安心できる、という意見もよくありますが、HDDも稼働中は何らかの形でネットワークに繋がっている状態にあります。
そう考えると、磁気テープに注目が集まるのはおかしな傾向ではありません。

また、磁気テープの製造技術や素材の質の向上により、磁気テープのデータ保存量は昔よりも大幅に増加しています。
富士フイルムとIBMの共同開発では、1巻で580TBまで保存が可能なのです*2

また、環境面への配慮という点でも注目されています。
CO2排出量の削減が国際的な目標となっている中、磁気テープでのデータ保存は消費電力が少なくて済む、少なくとも保存中は電力を消費しないという特徴があるのです。

「データ防災」をどう考える?

オンプレミス、クラウド、テープ...データの管理方法にはそれぞれ異なる特徴があります。
ただ、企業にとって「データは財産」と言えるこれからの時代では、様々なバックアップを考える必要があるというのは確かな事実です。

クラウドサービスでのデータ保管の場合、冗長化(2つのサーバーを同時運用し、データをリアルタイム更新しながら保存すること)によってバックアップ体制を取る企業も筆者の周辺ではよく見られるようになりました。
クラウドサービスの利用にあたっても「防災」の意識がこれまでより強化されています。

2018年に公表された経済産業省の「DXレポート」でも、レガシーシステムについて「保守運用の担い手不足で、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ消滅などのリスクの高まり」を指摘しています*3。

上記の事例を踏まえて考えると、オンプレミスやテープといった手法とクラウドについては次のようなことが言えそうです。

  • クラウド:自然災害など物理的な災害に対する安全性
  • オンプレミス:サイバー災害対策を独自で強化できる
  • テープ:サーバー攻撃を受けにくい

それぞれ、データ防災の手法が異なっています。

「ハイブリッド」という柔軟な考え方も

国際的な調査機関であるIDCによると、今後も世界でのデータストック量は加速度的に増加することが予測されています(図3)。

図3 世界のデータストック量(ZB=ゼタバイト、175兆ギガバイト)
(出所:「Accelerating Green Datacenter Progress with Sustainable Storage Strategies」IDC)
https://asset.fujifilm.com/master/americas/files/2021-10/5c4e59187b7c6d5edb8c8e2bc1078fe8/IDC-Fujifilm-green-DC-WP_092421.pdf p.4

物理的災害、サイバー攻撃での災害、どちらの形の災害にも備えるためには、これらのメリットをうまく利用する必要性があります。

その手段として、クラウドとオンプレミスの同期、複数のクラウドへの分散、データセンターの物理的分散というやり方が考えられます。

クラウドの利便性やHDDやテープの高機能化はこれからもますます進むことでしょう。
どちらを選んで良いかわからない、と戸惑う企業も少なくないことと思いますが、どちらかだけが優れていると決めつけてしまうのではなく、戦略性を持ったシステム構築を考える時代に来ています。


*1
「グーグルも磁気テープ活用 サイバー対策・省電力で再注目」日本経済新聞 2022年2月22日
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80347060R20C22A2TEB000/

*2
「LTOテープ」富士フイルム
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/data-management/datastorage/ltotape

*3
「DXレポート サマリー」経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

清水 沙矢香

福岡県出身。2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や統計分析を元に各種メディアに寄稿。

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