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働くママ必見!子育てで気をつけたい感染症対策と仕事との両立を薬剤師が解説

2023年07月12日生活・子育て

2023年5月8日をもって新型コロナウイルス感染症が5類感染症となり*1、パンデミックに対する警戒感も薄れつつあります。
しかし、感染症法における位置づけが変更になったとはいえ、新型コロナウイルスに感染するリスクが低くなったわけではありません。また、流行に注意が必要な感染症は新型コロナウイルス感染症以外にもあります。
特に、保育園や学校などで集団活動をしている子どもたちは、常に感染のリスクにさらされているといっても過言ではありません。そして、子どもが風邪などに罹患した場合、多くの家庭では母親が仕事を休んで対応しているのが現状です。

(引用)一般財団法人日本病児保育協会 認定病児保育スペシャリスト「共働き家庭の子育て事情、『子どもの病気』はワーキングマザーまかせ!」*2
https://sickchild-care.jp/press/8924/

そこでこの記事では、子どもを感染症から守り、子育てと仕事の両立をかなえるために保護者が心がけるべきことを紹介します。

子どもを感染症から守るために保護者が取り組むべきこと

子どもを感染症から守るために保護者が取り組むべきことは、必ずしも特別なことばかりではありません。ただ、保護者のサポートがあってはじめて実現できる内容もあるため、意識して取り組む必要があります。

規則正しい生活を心がける

体内の免疫システムは、自律神経に支配されています。そのため、免疫力を高めるためには、自律神経を整えることがとても重要です*3。
そして、自律神経を整えて免疫機能を維持するためには、起床時間や就寝時間、食事の時間などをある程度決めて、規則正しい生活をすることが必要です。

実際、生活パターンが不規則だと睡眠が十分にとれず、疲れがたまりやすくなります。また、睡眠不足や疲労が常態化すると、体調を崩しやすくなります。これは、大人でも子どもでも同じことです。

「休みの日くらいゆっくり寝たい......」と思うかもしれませんが、土日や祝日、長期休暇中も生活パターンが大きく乱れないようにすることが感染症予防につながります。子どもの夜更かしを防ぎ、睡眠時間を確保するためにも、起床時間と就寝時間だけは決めておくようにしましょう。

栄養バランスの良い食事を心がける

栄養バランスの良い食事で、感染症に負けない健康な体づくりをサポートすることも大切です。
特に、免疫細胞のもととなるたんぱく質を含む食品*4、抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eを含む食品*5、免疫細胞の約7割が生息する腸内の環境を整える食品*6などは、積極的に食事に取り入れるようにしましょう(下表参照)。

表:感染症対策として積極的に摂取したい栄養素や食品
たんぱく質(免疫細胞の原料となる)*4
たんぱく質を多く含む食品:魚類、肉類、卵、大豆および大豆製品など
ビタミンA・C・E(免疫機能の低下を引き起こす活性酸素を取り除く)*4*5
ビタミンA(βカロテン)を多く含む食品:緑黄色野菜
ビタミンCを多く含む食品:キウイ、ブロッコリー、キャベツ、ジャガイモなど
ビタミンEを多く含む食品:アーモンド、モロヘイヤ、アボカド、卵など
食物繊維、オリゴ糖(腸内の善玉菌のエサとなる)*6*7
食物繊維を多く含む食品:海藻類、野菜類、果実類、豆類など
オリゴ糖を多く含む食品:大豆、タマネギ、ゴボウ、ネギ、バナナなど
発酵食品(善玉菌を含んでいる)*6*7
ビフィズス菌や乳酸菌を含む食品:ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、味噌など

可能であれば予防接種を受ける

ワクチン接種については賛否両論ありますが、アレルギーなど禁忌に該当する事項がない場合は接種を検討してみてはどうでしょうか。

感染力の強い感染症に罹患すると、保育園や学校にしばらく出席できなくなる場合があります(下表参照)。しかし、ワクチンを接種しておけば感染リスクがおさえられて重症化も予防できます。また、家族内での感染リスクもおさえられます。子育てと仕事の両立のためにも、ワクチンは有用なサポーターといえるでしょう。

表:子どもの感染症(例)と出席停止の基準
感染症の種類出席停止の基準
新型コロナウイルス感染症
(ワクチン有)
発症後5日、かつ、症状が軽快したあと1日を経過するまで
インフルエンザ
(ワクチン有)
発症後5日、かつ、解熱後2日(幼児は3日)が経過するまで
百日咳
(ワクチン有)
特有の咳が消失するまで、または、5日間の適正な抗菌剤による治療が終了するまで
麻しん(はしか)
(ワクチン有)
解熱後3日を経過するまで
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
(ワクチン有)
耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫れが発現したあと5日間を経過し、かつ、全身状態が良好となるまで
風しん
(ワクチン有)
発疹が消失するまで
水痘(みずぼうそう)
(ワクチン有)
すべての発疹がかさぶたになるまで
(参考)「学校保健安全法施行規則第18条・第19条」*8
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333M50000080018
VPDを知って、子どもを守ろう。「子どものVPD」*9
https://www.know-vpd.jp/vpdlist/index.htm
を参考に筆者作成

感染リスクをおさえるために家族全員で取り組むべきこと

感染症に罹患するリスクをおさえるためには、家族と協力して取り組まなくてはならないこともあります。
ここからは「新しい生活様式」をもとに、生活の中に取り入れるとよい習慣や感染リスクをおさえる環境づくりなどを紹介します。

手指洗浄を習慣にする

感染症はさまざまな経路で感染が拡大しますが、原因となるウイルスや細菌は手指を介して体内に侵入することが少なくありません*10。
そのため、感染リスクをおさえるためには家族全員で手指洗浄を習慣化することがとても重要です。
帰宅時はもちろん、家庭内でも食事の前後や咳・くしゃみのあと、幼いお子さんがいる場合はオムツを取り換えたあとなどにも、忘れずに手洗いをするようにしましょう。

(引用)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>国民の皆さまへ (新型コロナウイルス感染症)」*11
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html

こまめに換気をする

手指洗浄は接触感染の予防には効果的ですが、飛沫感染や空気感染を防ぐためにはこまめな換気も必要です。
特に密閉空間では、空気の出入りがほとんどないため飛沫感染や空気感染のリスクが高くなります。ウイルスなど病原菌の濃度を低くするためにも、30分に1回は換気をして*12感染リスクをおさえましょう。

外出時は「密」を意識する

感染症に罹患するリスクを減らすためには、「密」を避ける行動を意識することも大切です。特に外出する際は、可能な限り「3密(密集・密接・密閉)」を回避するようにしましょう。
3密を回避する工夫例としては、以下のようなものがあります。

★公共交通機関を利用する場面で
  • 時差通勤をする。
  • 自転車利用や徒歩を併用して、公共交通機関を利用する区間を短くする。
  • 新幹線などは予約システムを利用して、長時間並ぶのを避ける。
★日用品などの買い物をする場面で
  • 人の多い時間を避けて買い物に行く。
  • 購入予定品をリスト化して短時間で済ませる。
  • 食材の宅配サービス(ネットスーパーなど)を利用する。
  • 電子決済で支払いにかかる時間を短縮する。
  • 一人で買い物に行く(子どもを連れて行かない)。
★外食などの場面で
  • 混みやすい時間帯を避ける。
  • オンライン予約システムを利用する。
  • 大皿料理を避ける。
  • テラス席など屋外の席を利用する。
(参考)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました」*13を参考に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

感染症対策を習慣化すれば毎日が「楽」になる!

ここまで、さまざまな感染症対策を紹介してきましたが、残念ながら感染症を完全に封じ込めることは不可能です。しかしながら、日常生活の中に感染症対策を取り入れれば、感染症に罹患するリスクは軽減できます。

また、「感染症対策」と考えると少々面倒に感じるかもしれませんが、子どものいる家庭だからこそ、新型コロナウイルス感染症の流行前から実践している内容(例:手洗い・こまめな換気・買い物のリスト化・予約システムの利用など)も多いのではないでしょうか。

感染症対策は、子どもの健康維持にもつながるものです。子どもの急病や通院の回数が減少すれば、保護者は安心して仕事に取り組めるようになり、不安やストレスも少なくなります。

感染症対策で特別にやらなければならないことは、ほとんどありません。日常生活の中に取り入れられることも多数あります。感染症対策を習慣化して、子どもと一緒に過ごす毎日をもっと「楽」にしましょう。




参考文献・参考サイト


*1(参考)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html
*2(引用)一般財団法人日本病児保育協会 認定病児保育スペシャリスト「共働き家庭の子育て事情、『子どもの病気』はワーキングマザーまかせ!」
https://sickchild-care.jp/press/8924/
*3(参考)シオノギヘルスケアONLINE「読みもの>自律神経を整えて免疫力を高めよう!」
https://www.shop.shionogi-hc.co.jp/Reading/Exercise_20221012.html
*4(参考)全国健康保険協会「都道府県支部>鳥取>健康づくり>【健康コラム】みんな、きんさい!保健師・管理栄養士だで~>平成29年度>【健康コラム】みんな、きんさい!保健師・管理栄養士だで~>免疫力を整える体づくりを!!」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/tottori/cat070/2017042501/2018040401/2017042503/30010901/
*5(参考)e-ヘルスネット「健康用語辞典>栄養・食生活>抗酸化ビタミン」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-008.html
*6(参考)大正製薬製品情報サイト「大正製薬お役立ちコラム>生活習慣ケアコラム>免疫力を高めるには、「自律神経」と「腸内環境」を整えよう」
https://brand.taisho.co.jp/contents/livita/560/
*7(参考)e-ヘルスネット「栄養・食生活>栄養素等のはたらき>腸内細菌と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
*8(参考)「学校保健安全法施行規則第18条・第19条」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333M50000080018
*9(参考)VPDを知って、子どもを守ろう。「子どものVPD」
https://www.know-vpd.jp/vpdlist/index.htm
*10(参考)AMR臨床リファレンスセンター「一般の方へ>私たちができること>基本的な感染対策をしましょう」
https://amr.ncgm.go.jp/general/1-6-3.html
*11(引用)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>国民の皆さまへ (新型コロナウイルス感染症)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html
*12(参考)環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)>コロナと換気>1. 新型コロナ対策のための換気について」
ttps://www.env.go.jp/earth/zeb/ventilation/index.html
*13(参考)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>感染症情報>新型コロナウイルス感染症について>新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

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