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ジョブ型も! 変革期にあるインターンシップ その概要と活用方法とは?

2023年05月02日解説

2022年6月、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(三省合意)が一部改正されました。

この改正ではインターンシップの新たな定義が示され、類型化が行われました。また、2025年度新卒就職者(2023年度に学部3年生に進学した学生)から、一定の基準を満たしたインターンシップで企業が得た学生情報を、企業が広報活動や採用選考活動に使用できるようになりました。

現在まさに変革期にあるインターンシップについて、その概要と有用性、活用方法を解説し、取り組み事例をご紹介します。

大学生のインターンシップに関する三省の基本的な考え方

まず、インターンシップに関する「三省合意」以降の経緯をみていきましょう。

「三省合意」の改正に至る経緯

上述の「三省合意」では、インターンシップで取得した学生情報を広報活動や採用選考活動に使用してはならないとされていました。*1

それがどの程度遵守されていたかは別として、2022年4月には、インターンシップの新たな定義が定められ、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に企業が活用可能とすることで産学が合意に至ったことが報告されました。

上述のように、それを受けて2022年6月に「三省合意」が改正され、「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」(以降、「改正三省合意」)が公表されました。

まず、その概要をみていきましょう。

インターンシップの類型と採用に活用可能なタイプ

「改正三省合意」で定められたインターンシップの新たな定義は次のようなものです。*2:p.1
  「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に、自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験(企業の実務を経験すること)を行う活動(但し、学生の学修段階に応じて具体的内容は異なる)」

その上で、従来のインターンシップを以下のように4つに類型化し、タイプ3とタイプ4のみを「インターンシップ」としています(図1)。*3

図1 三省合意改正のポイント
出所)厚生労働省「令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000986401.pdf

4つの類型のうち、タイプ3で取得した学生情報は、広報活動・採用選考活動の開始時期以降に限って使用可能となりました。*3
ただし、タイプ3であっても、以下の基準を満たす必要があります。

  • 就業体験要件(実施期間の半分を超える日数を就業体験に充当)
  • 指導要件(職場の社員が学生を指導し、学生にフィードバックを行う)
  • 実施期間要件(汎用能力活用型は5日間以上。専門活用型は2週間以上)
  • 実施時期要件(卒業・修了前年度以降の長期休暇期間中)
  • 情報開示要件(学生情報を活用する旨等を募集要項等に明示)
また、タイプ4は現在試行中ですが、就業体験を要件として、広報活動・採用選考活動の開始時期以降に限ってインターンで得た学生情報を使用可能となっています。*2:p.8

ジョブ型インターンシップ

タイプ4の一種である「ジョブ型研究インターンシップ」は、博士課程学生を対象とした長期かつ有給のインターンシップで、現在、文部科学省と経団連が推進しています。*4
ジョブ型研究インターンシップのポイントは次の3つです。

  1. 企業と学生は雇用契約を結んだうえで、2か月以上の長期かつ有給を前提として、企業が学生を募集する際に提示したジョブディスクリプション(職務記述書)に基づいて、企業の研究に貢献する。なお、同インターンシップへの参画にあたり、企業側でのジョブ型雇用制度の導入を要件としない。
  2. 大学の正規の教育課程として実施する。
  3. 受け入れた企業はインターンシップの評価を採用選考の際に活用できる。
雇用形態には以下の2つのタイプがあります(図2)。*5:p.10

図2 ジョブ型インターンシップの雇用形態
出所)文部科学省高等教育局「ジョブ型研究インターンシップ(先行的・試行的取組) 実施方針(ガイドライン)」p.10
https://www.mext.go.jp/content/20210521-mxt_senmon01-000014929_3.pdf

学生にとってのメリットは進路の可能性を広げることができることです。*4 一方、企業のメリットは、多様な大学・分野から企業競争力向上に貢献できる優秀な博士課程学生を採用できることです。
そして、大学のメリットは、博士課程のカリキュラムの質が向上し、大学のブランド力強化が期待できることです。

2021年度には自然科学系の博士課程学生を対象にトライアルを実施し、参加企業とのマッチングが成立した学生23人がインターンシップに参加しましたが、その後、実施企業と参加学生にトライアルに関してアンケート調査をしたところ、両者からよい反応が得られました(図3)。

なお、2023年度からは自然科学系に限らずすべての研究分野の博士課程学生を対象としています。

図3 2021年度ジョブ型インターンシップ・トライアルに関するアンケート調査結果
出所)日本経済団体連合会「経団連タイムズ 博士人材のキャリアパス構築に向けてージョブ型研究インターンシップに関する説明会を開催」
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/0323_13.html

このジョブ型インターンシップに取り組む「ジョブ型研究インターンシップ推進協議会」には、2023年3月1日現在、企業50社と大学64校が参画していますが、文部科学省は参画企業・大学のさらなる拡大を期待しています。


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インターンシップの活用方法

厚生労働省は、「中小企業やスタートアップ企業においても、職場での就業体験を組み込んだインターンシップの実施を自社の魅力・良さ・仕事のやりがい等を学生に伝える機会と捉え、前向きにご検討ください」と提唱しています。*3

では、企業がインターンシップを活用するにはどうしたらいいのでしょうか。
経済産業省による「成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド」に沿ってみていきましょう。

企業の通常業務や新規事業を推進するためのエンジン

インターンシップは日本では大手企業の就職活動というイメージが強いかもしれませんが、実はさまざまなタイプのものがあります。

上述のように、タイプ3のインターンシップでは、学生情報を企業が活用するための要件に、「就業体験」と「指導」が含まれ、実践的な活動を想定していることがわかります。

インターンシップはもともと海外では、企業の通常業務や新規事業を推進するためのエンジンとして、大企業だけでなく中小企業にも広く普及しています。*6:p.4

上述のガイドでは、インターン生を戦力とするパターンをいくつか示していますが *6:p.5、これらの取り組み事例から3例、ご紹介します。

新規事業立ち上げエンジンとしての活用

新しい事業のアイディアがあっても、人手が足りずに立ち上げることができない―そんな状況で、インターン生に新プロジェクトのリーダーを任せた事例があります。*6:pp.10-11

株式会社健幸食品は、新潟県内の農家から野菜を仕入れる流通会社です。
同社の新規事業「八百屋プロジェクト」は、 地域をまわる行商から試行錯誤を経て個別宅配サービスを立ち上げ、地域の地産地消を目指すというプロジェクト。

リーダーを任されたインターン生は、フットワークを活かし、1,000件を超える個別訪問を行いました。顧客は彼との会話を楽しみ、客数も売上もアップ。
また、彼の積極的な姿勢は、若手スタッフの刺激となり、組織の活性化にもつながりました。

営業・販路拡大での活用

次にご紹介するのは、BtoBの分野でもインターン生が活躍できた事例です。*6:pp.14-15

北海道の株式会社アイドウは、プラスチック加工技術を使って、多種多様なオリジナル製品を作っています。ただ、高い技術をもちながら、BtoBの企業としては、外への発信が弱いという課題を抱えていました。

インターン生には最初、工場でモノづくりに励んでもらい、「これなら外に出しても大丈夫」と判断した段階で、営業の仕事を任せました。
するとある日、彼は営業先の1つであった郵便局で、受付でちらばっているケーブルを目にし、それを整理する製品のアイディアを思いつき、社内で提案しました。

もともとデザイン専攻だった彼は、製品のデザインも手がけ、全国1,200の郵便局に案内を出した結果、480件の発注を得ました。

大学生の積極的な姿勢と斬新なアイディアが新製品を産み出し、会社の空気をいい方向に変えた例です。

学生の強みを活かした活用

株式会社雇用促進事業会は地域密着の求人情報誌を発行しています。その情報誌の1つが学生読者数の伸び悩みという課題を抱えていました。*6:pp.16-17

そこで、同社の社長が、雑誌コンテンツのリサーチをインターンプロジェクトとして設定したところ、地域の雇用創生という趣旨に共感した学生3人が2か月のインターン生として参加。

彼女たちは最初はやや苦労しましたが、最終的に502人の学生、153社の企業からアンケートを集めました。
その調査結果が求人情報誌のコンテンツとして役立った上に、学生インターンの熱意に賛同した企業から多くの求人広告を得ることもでき、事業成果も上げられました。

彼女たちの熱意が顧客とのきずなをより深め、彼女たちを社内に迎えたことで社員教育にもつながりました。社員は学生インターン生から刺激を受け、モチベーションが向上したということです。

おわりに

インターンシップは、今後、就業体験を盛り込むことが一般化していくものとみられます。
ジョブ型インターンシップを導入したり、通常業務・新規事業立ち上げに活用することで、事業成果だけでなく、組織の活性化などの副次的なメリットも期待できます。
これを機会に、インターンシップについて改めて検討してみたらいかがでしょうか。


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資料一覧


*1
出所)経済産業省「現大学2年生より、インターンシップのあり方が変わります! ~「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を改正しました~」(2022年6月13日)
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220613002/20220613002.html

*2
出所)文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方(2022年6月13日一部改正)」p.1, p.8
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220613002/20220613002-1.pdf

*3
出所)厚生労働省「令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000986401.pdf

*4
出所)日本経済団体連合会「経団連タイムズ 博士人材のキャリアパス構築に向けてージョブ型研究インターンシップに関する説明会を開催」(2023年3月23日)
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/0323_13.html

*5
文部科学省高等教育局「ジョブ型研究インターンシップ(先行的・試行的取組) 実施方針(ガイドライン)」(2021年5月21日、2023年2月27日 一部改正)p.10
https://www.mext.go.jp/content/20210521-mxt_senmon01-000014929_3.pd

*6
出所)経済産業省「成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド」p.4, p.5, pp.10-11, pp.14-15, pp.16-17
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/intern/guidebook-all.pdf

横内美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。
高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。
パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。

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