フリーワード検索

アイネットブログ

SDGsを語る時に欠かせないCDPとTCFDとは?その役割を理解しよう

2023年05月31日解説

2015年9月の国連サミットで掲げられた持続可能な開発目標・SDGs(エスディージーズ)の認知度は年々高くなっています。
近年では、様々な国や企業、自治体も持続可能性(サステイナビリティー)を重要視しています。

金融分野も例外ではなく、持続可能な社会を実現するための金融・サステイナブルファイナンスが拡大しています。

今回は、サステイナブルファイナンスを考えるときに欠かせない「CDP」と「TCFD」について解説します。

持続可能な社会実現のための金融業や役割

日本では、多くの人がサステイナブルという単語から「地球環境」をイメージしています。*1

地球環境と金融と考えると一見つながりがないようにも思えますが、実は持続可能な社会の実現において、金融は重要な役割を担っています。
それが「サステイナブルファイナンス」です。

ISOのサステイナブルファイナンスに関する技術委員会(ISO/TC 322)では、サステイナブルファイナンスについて、以下のように定義しています。*2

「環境、社会、統治の慣行を含む持続可能性の考慮事項を、経済活動のファイナンス(資金供給・調達)に統合するためのもの。」

つまり、環境問題や社会的課題を解決するために金融面から誘導する手法や活動のことをサステイナブルファイナンスと言います。

具体的には、昨今注目されるようになったESG投資、サステイナブルローン、ESG債などが該当します(図1)。*3

図1(引用)東京都 政策企画局「サステナブルファイナンスとは(上)」
https://2021.tsfw.tokyo/what_is_sustainable_01

持続可能な社会を実現するためには、私たちが日々利用する商品・サービスを生産・提供する側(企業)の取り組みも重要です。しかし、企業の資金だけで持続可能な社会を実現することはできません。
社会全体が持続可能なシステムに移行するためには、膨大な資金が必要であり、公的資金に加えて、民間資金も大きな役割を担っているのです。*4

今や、金融は「持続可能な経済社会システムを支えるインフラ」として位置づけられています。*5

ESGとは

サステイナブルファイナンスと調べると「ESG」という単語が多く出てきますが、ESGとはいったいどんな意味があるのでしょうか。
ESGは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です(図2)。*6

図2(引用)年金積立金管理運用独立行政法人「ESG投資」
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/

私たちの生活は、経済が発展するにつれて豊かになってきました。一方で、地球温暖化やオゾン層の破壊などの環境問題、劣悪な労働条件で働く労働者や企業の不祥事などの問題が浮き彫りになっています。

このような問題を抱えたままでは、経済社会自体が持続できない可能性があります。
そのため、社会、企業の存続には以下のようなESGの考え方が重要となります。*6

  • 気候変動の抑制や水資源の保全、 生物多様性の確保など環境に良い取組みを行うこと。
  • ダイバーシティ(多様性)の推進、サプライチェーンに対する社会的配慮などを行うこと。
  • コーポレートガバナンス(公正で透明のある経営取締役会の構築、少数株主の権利保護など)を構築していること。

そして、ESGの考え方を投資基準に反映したものが、ESG投資です。

これまでの投資は、キャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報を基準として行われていましたが、近年では、ESGの要素を取り入れた投資が広がっています。*6,*7
2022年12月末時点で189兆9,362億円を運用している世界最大級の機関投資家「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」もESG投資を推進しています。*8,*9

ESGの評価機関「CDP」と「TCFD」

投資において「環境・社会・ガバナンス」の観点が重要であるとはいえ、投資家からすると基準がなければどの企業に投資すればよいのか判断がつきません。

この判断基準として活用されているのが、ESGスコアです。
ESGスコアは第三者評価機関が、環境・社会・ガバナンスにおける評価基準を設け、対象となる企業のスコアリングを行い決定されます。*10

ESGスコアリングを行う評価機関として代表的なのが、「CDP」と「TCFD」です。

CDP

CDPは2000年にイギリス・ロンドンで設立された非営利団体で、旧称を「Carbon Disclosure Projectといいます。
CDPでは、全世界の企業や団体、機関投資家に質問書を送付し、その回答に基づいてAからDのスコアリングを行っています(図3)。*11

図3 CDPスコアの表示方法
(引用)株式会社日本取引所グループ「ESG評価機関等の紹介」
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esgknowledgehub/esg-rating/01.html

質問書は「気候変動」、「水セキュリティ」、「フォレスト」の3分野に分けられており、最も高い評価であるAを獲得した企業は、その分野における先進企業と認められています。
2022年には気候変動の分野で74社、水セキュリティ分野で35社、フォレスト分野で4社の日本企業がA評価を獲得しています。*11,*12

TCFD

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は2015年にG20からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)により設置された民間主導の組織です。
日本語では、気候関連財務情報開示タスクフォースといいます。*13

TCFDには、気候関連のリスクや機会を適切に評価し価格付けするために、投資家や保険会社などが求める情報を明らかにする役割があります。
気候関連財務情報開示に関する枠組みとして、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標の4つの提言を策定しており、それぞれ推奨される開示内容も決まっています(表1)。*14

表1 タスクフォースによる提言と推奨される情報開示
(引用)経済産業省「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」P12
https://assets.bbhub.io/company/sites/60/2020/10/TCFD_Final_Report_Japanese.pdf

2023年3月27日現在、TCFDに対して、世界全体では金融機関をはじめとする4,344の企業・機関が賛同を示しています。また日本でも1,252の企業・機関が気候変動に関する財務情報開示を積極的に進めていくTCFDの趣旨に賛同しています。*15

「CDP」と「TCFD」以外のESGの評価機関

「CDP」や「TCFD」以外にも、ESG評価機関やデータプロバイダは存在します。
例えば、1981年にアメリカで設立されたブルームバーク、1995年に設立されたロンドン証券取引所グループ傘下のFTSE Russelなどがあります。*16

ESG評価機関の行動規範策定

前述の通り、ESG評価機関やデータプロバイダは複数存在し、その評価方法もまちまちです。
評価機関が算出したスコアは投資家にとって非常に参考になるものですが、明確な基準がなく評価手法の透明性や公平性において課題を抱えています。
例えば、同じ企業であっても評価機関が違えば、スコアのばらつきが生じます。スコアによって投資額が左右されてしまう企業にとっては、「一方的な格付け」が行われている状況でした。*17

そこで、2022年12月、日本の金融庁は世界に先駆けて評価機関を対象とした「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」を公開しました。*18

この規範には、「品質の確保」、「人材育成」、「独立性の確保・利益相反の管理」、「透明性の確保」、「守秘義務」、「企業とのコミュニケーション」という6つの原則が盛り込まれています。*19

行動規範に法的な強制力はありませんが、規範を守る評価機関が増えれば、企業にとって評価された点・改善すべき点がわかりやすくなるというメリットがあります。*18

ESG評価機関の役割

2000年代に入り企業価値を高める活動として、CSRへの取り組みの重要性が高まっています。*20

CSRとはCorporate Social Responsibilityの略で、「企業の社会的責任」という意味です。*21
厚生労働省によるとCSRとは「企業活動において、社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことを求める考え方」と定義されています。*22

CSRはESGと近い関係にあり、ESGの考えに基づいた企業活動は、企業の社会的責任を果たす行為にもつながります。*23
一方で、ESGの考えに基づいた企業活動は、CDPやTCFDをはじめとするESG評価機関によって評価されます。
つまり、ESG評価機関は企業価値を決定する上で非常に重要な役割を担っているのです。

ESG評価機関が影響を与える対象は、企業だけにとどまりません。

2022年11月、岸田政権は「資産所得倍増プラン」を策定しました。
プランの中では、NISA の抜本的拡充や iDeCo 制度の改革をはじめとした、資産所得を増やす取り組みを推進すると述べられています。*24

政府として、個人の金融資産を「貯蓄」から「投資」へ誘導する狙いがあり、これから「投資」はより身近な存在となるでしょう。

前述の通り、企業価値を測る上でESGの観点は欠かせません。
そのため、機関投資家だけでなく個人投資家も、ESG評価機関が発表するESGスコアを注視する必要があります。

CDPやTCFDをはじめとするESG評価機関は、企業経営、投資活動に大きな影響を与える組織なのです。


*1(参考)株式会社電通「サステナブル・ライフスタイル・レポート2021」p11
https://institute.dentsu.com/wp-content/uploads/2021/12/%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%882021-1.pd

*2(引用)一般財団法人 日本規格協会「ISO/TC 322(サステイナブルファイナンス)」
https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/dev/isotc_322/

*3(参考)東京都 政策企画局「サステナブルファイナンスとは(上)」
https://2021.tsfw.tokyo/what_is_sustainable_01

*4(参考)環境省「持続可能な社会の形成に向けたESG地域金融の普及展開のための共通ビジョン」p1
ttps://www.env.go.jp/policy/2-2commonvition.pdf

*5(参考)金融庁「サステナブルファイナンスの取組み」
https://www.fsa.go.jp/policy/sustainable-finance/index.html

*6(参考)年金積立金管理運用独立行政法人「ESG投資」
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/

*7(参考)財務省「ESG投資について」p8
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_kkr/proceedings/material/kyousai20201202-3.pdf

*8(参考)年金積立金管理運用独立行政法人「2022年度の運用状況(運用実績)」
https://www.gpif.go.jp/operation/the-latest-results.html

*9(参考)日本経済新聞「GPIFとは 世界最大級の機関投資家」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC045O00U2A700C2000000/

*10(参考)NTTファシリティーズ「投資家の新たな指標「ESGスコア」とは」
https://www.ntt-f.co.jp/column/0177.html

*11(参考)株式会社日本取引所グループ「ESG評価機関等の紹介」
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esgknowledgehub/esg-rating/01.html

*12(参考)CDP「CDP2022 スコア公表 Aリスト企業過去最多も、気候変動、フォレスト、水セキュリティのすべての課題に対して、情報開示とアクションでリードしている企業はわずか1.3%」p1
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/006/864/original/JPNPR_2022CDPScoreRelease.pdf

*13(参考)経済産業省「気候変動に関連した情報開示の動向(TCFD)」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/disclosure.html

*14(参考)経済産業省「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」p4,p12
https://assets.bbhub.io/company/sites/60/2020/10/TCFD_Final_Report_Japanese.pdf

*15(参考)経済産業省「日本のTCFD賛同企業・機関」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/tcfd_supporters.html

*16(参考)日本取引所グループ「ESG評価機関等の紹介」
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esgknowledgehub/esg-rating/index.html

*17(参考) 日本経済新聞「金融庁、ESG「勝手格付け」に規範」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62105320X20C22A6EE9000/

*18(参考)金融庁「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」の公表について」
https://www.fsa.go.jp/news/r4/singi/20221215/20221215.html

*19(参考)金融庁「ESG 評価・データ提供機関に係る行動規範」p18-30
https://www.fsa.go.jp/news/r4/singi/20221215/01.pdf

*20(参考)青山学院大学 上野 修平,大内 紀知「CSR活動と企業価値の関係性」p1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmin/2016f/0/2016f_135/_pdf/-char/ja

*21(参考)厚生労働省「労働に関するCSR推進研究会報告書」p1
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0331-6a_0001.pdf

*22(参考)厚生労働省「労働政策全般:CSR(企業の社会的責任)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudouseisaku/csr.html

*23(参考)東芝テック株式会社「ESGとは?SDGsやCSRとの違い、企業の対応方法について考える」
https://www.toshibatec.co.jp/products/office/loopsspecial/blog/20210903-69.html

*24(参考)内閣府「資産所得倍増プラン」p3
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/dabiplan2022.pdf

田中ぱん

海と山に囲まれた環境で育ち、学生のころから地球環境や地球温暖化に興味を持つ。大学では環境に関する行政や文化、科学を学ぶ。公害防止管理者など環境関連の資格を複数所有し、現在は環境や農業に関する記事を中心に執筆中。

TOP